代々木上原駅と代々木八幡駅をつなぐ細い通りに、アパレルショップが点在しているのをご存じでしょうか?古着屋をはじめ個人経営のセレクトショップなど、ファッション好きなら訪れてみたいお店が通りの左右に立ち並んでいます。 можно ли взять квартиру в ипотеку
国内外の個性的なブランドのアイテムを取り扱う「BACKDOOR(バックドア)」は、この通りにおけるアパレルショップのパイオニア的存在。以前、ACT LOCALLYでも紹介した「SPEAKEASY SALOON BEAUTYSMITH(スピークイージー サルーン ビューティースミス)」と同じビル内に店舗を構えています。
事前調査によると、こちらのバックドアは2人のオーナーが運営しているそう。今回は代々木上原エリアに店舗を構えた経緯や、セレクトする服のこだわりについていろいろと聞いてみました。
スタートのきっかけは「好きな服を集めたい」
──まず最初に、お店を始めることになった経緯を教えていただけますか。
アパレルの店は、もう学生のころからずっとやりたかったんです。僕は高校卒業後に服飾の専門学校へ行ったんですけど、そのころからの夢というか。で、専門を出たあとはビームスに就職して、しばらく働いていました。でも25歳になったころ、やっぱり自分で店をやりたいと思うようになりまして。そこから2年間お金を貯めて、ビームスで同僚だった井岡(※共同オーナーの井岡千浩さん)と一緒に、「SUPPLY TOKYO(サプライトーキョー)」というオンラインストアを始めました。その時点では、すでに2人ともビームスを離れて違うブランドで働いていたんですけどね。そこを辞めて「とりあえず一緒に店やってみるか」って感じで。井岡と僕の職場が近所で、好きな服がわりと似ていたのが一緒に店を始めた理由です。
──オンラインストアからのスタートだったんですね。
ええ、実店舗はリスクが高いですし、まずはオンラインでやろうとなりまして。それが11年前のことなんですけど、当時はまだオンラインで服を売買する文化があまり根付いていなかったんです。なので、自分たちがやってみようと。オープンまでに1年ほど準備期間があったんですが、その間にニューヨークで買付の勉強をしたり、どんな品揃えにするか考えたり、いろいろと模索しました。
──サプライトーキョーを始めるにあたって、なにかテーマみたいなものはあったのでしょうか。
うーん、とくに決めていたわけじゃないんですが、あえて言うなら「国内未入荷もの」でしょうか。当時はいまと違って、日本で買えないものが海外にたくさんあったんです。世界的にもオンラインショップのインフラが整っていなかったので、海外の店が日本に向けて発送することも少なくて。僕ら自身、そういった海外ブランドの服が好きだったので、「ほかでは買えない、サプライトーキョーだけに置いてある服」という集め方をしました。当時は買付さえ行けば、いい服を手に入れられるという状況だったので、そこに勝負のし甲斐を感じましたね。
オンラインストア市場の膨張で、実店舗のオープンを決意した
──そこからなぜ、実店舗をオープンすることに?
サプライトーキョーのスタートから3年くらい経ったころ、アパレルのオンライン市場に大きな資本を持った企業が参入し始めて、価格競争が激しくなってきたんです。そのとき僕らは、ニューヨークで上代(※メーカーや卸元が一般消費者へ販売する価格)で買い付けたアイテムを日本に持ち帰って、そこに価格を上乗せして売って、その差額で商売をしていたんですね。でも、大手の場合は現地にシッパーがいて、買付に行かなくても向こうから送ってもらえるんです。当然、もろもろ経費がかからないので、そのぶん販売価格を安くすることができる。で、そのやり方にはもう勝てないな、このままじゃ自分たちは続かないな、と感じました。それプラス、僕らと同規模で同じ買付のやり方をするオンラインストアが増えてきたということもあって。ちょっとこのままじゃマズイな、と。なので、海外で買付せずとも成立して、実際に商品を手に取ってもらえるスタイルを考えた結果、実店舗をオープンしました。あとは単純に、昔からずっと実店舗は出してみたかったので。
──なぜこの場所(元代々木町)を選んだのでしょうか?
当時は幡ヶ谷に住んでいて、渋谷なんかに行くときはこの辺りをいつも通過してたんです。あるとき店の前を通ったら、テナントが空いていることに気づきまして。で、とりあえず問い合わせてみたら予想よりも家賃が安かったので、勢いで決めちゃいました。半地下だからあまりひとが来ないのかな、とか思ったんですが、僕らはオンラインが主軸で、基本的には事務所としての利用を考えていたので、まあ場所はどこでもいいかなって。それと、僕らが取り扱うのは珍しいブランドが多いので、大勢というよりは知っているひとがピンポイントで来店してくれればいいかな、とも思いました。この辺りは当時、アパレルのお店がほとんどなかったので、未開拓な雰囲気もありましたし。
──たしかに最初は、入口がどこなのかちょっと迷いました。
そうですよね。この見つけにくさがネックではあるんですが、いまとなってはこの感じもいいかなって。
──それはなぜでしょうか?
実は僕らは、この店舗とオンラインストア以外に、海外ブランドの総代理店をやっていたりするんです。「ONLY NY(オンリーニューヨーク)」というストリート&カジュアルブランドなんですが、このブランドの服を25店舗くらいのディーラーさんに卸す事業も展開しているので、もうお店のほうは売上とかではなく、好きな服を並べて好き勝手やって、というふうに切り替えている部分もあるからです。
ピックするのは、背景のストーリーに共感できる服
──アイテムのセレクトでは、どんなことを意識していますか?
服自体の話でいうと、万人ウケしそうなものはあまり扱わないようにしています。むしろ逆に、展示会とかでほかのセレクトショップが手を出さないアイテムをピックしてみたり。というのも、いまドメスティックブランドなどを取り扱う場合、みんな同じ展示会に行って、同じ商品を見ているんです。そうなると、どのショップも扱う商品が似てくるので、あとは見せ方の勝負なんですよ。たとえばうちでブツ撮りしている商品を、大手はモデルを使って撮影するとか。その見せ方で差をつけて、服を販売しているという状況が多いんです。でも、僕らはそこに面白みを感じていなくて。そもそも勝ち目がないというのもそうですし。だから、ほかのセレクトが扱わない、誰も手を出さないアイテムを選ぶ、というのは意識していますね。この考え方は、大手のセレクトショップで働いていた反動かもしれませんが…。
──なるほど、たしかに大多数は難しいかもしれませんが、特定の少数は共感してくれそうですね。
そうなんです。いまってほら、検索すればいくらでも服の情報が出てくるじゃないですか。とくに、みんなが良しとしているもの、売れているものほど情報量が多い。でも、僕らくらいの規模でセレクトショップをやるとしたら、逆にその情報が出てこない部分が勝負どころだと思うんです。展示会で誰も手を付けていない服とか、逆に売れなさそうな服とか。そういう「100人に1人は共感する」みたいな服が僕自身も好きなので、アイテムのセレクトではそのへんを心がけています。「あの店、よくわかんないけど面白い服たくさんあったな」と思ってもらえるようなラインナップ。あと、服のクオリティはもちろんですが、そのブランドが信頼できるかどうかも選ぶ基準になっています。
──信頼できる、というと?
そのブランドのひとが、人間としての付き合いができるかという視点でしょうか。モノはもちろんとして、作っているひとの人間性を受け入れられるかどうか、というか。僕らもこうしてお店をやっていて、「売れなくても面白い服を集めたい」という気持ちでやっているので、同じようなマインドで服を作っている、面白い提案をしてくれるブランドとお付き合いするようにしています。当然、セレクトするからには売れたほうが嬉しいんですけどね(笑)。
──では、アイテムのご紹介をいくつかお願いできますでしょうか。
そうですね……。たとえばこれは「Midorikawa(ミドリカワ)」というブランドのもので、世田谷区・羽根木にあるギャラリー兼アトリエ「Out of museum(アウトオブミュージアム)」とのコラボジャケットです。最近って、こういう服を街で見かけなくなってるじゃないですか。シンプルかつオーバーサイズで、デザインをそぎ落とす、みたいな服が主流になっていて、消費者からも好まれる。でも、洋服屋が服を考えるってなったとき、やっぱりこういう面白いデザインがいいんじゃないかなと思うんですよ。
この服は、本来だったら縫うはずの裏地を、あえて表に出すという断ち切り仕様のデザインを採用しています。昨今これだけデザインに凝っている服ってあまりないので、新鮮でとても面白いんです。
──たしかに、個性的で目を引くデザインですね。
はい、そうなんです。あとはドメスティックブランドでいうと……。あ、これなんかどうでしょうか。これは「ents.(エンツ)」というブランドで、「天然繊維を使って、国内生産でメゾンブランドを超える」というテーマで服作りをしています。ブランド名の頭文字は「easy not to sale(=簡単には買えないよ)」という意味から来ていて、このオーバーコートはカシミア100%。かなり高いので売れるとは思っていないんですが、素材や縫製が本当にいいので、値札を見る前にお客さんが手に取るんですよ。これだけシンプルで、デザインとしてはあまり目立たないのに、それでもお客さんが手で触れてみたくなる様子を見るのが興味深くて。
ですから、このコートに関しては、売れる/売れないの線引きでは考えていません。あくまで「目の保養」ですね。僕らの店にこのコートが置いてあることに意味があるというか。アートピースみたいな捉え方をしています。
──ご紹介ありがとうございます。ほかに、この秋冬で気になるアウターはありますか?
では、このジャケットはどうでしょうか? これは「NOROLL(ノーロール)」というブランドのリバーシブルジャケットで、中綿にシンサレートという暖かい素材を使用しています。ノーロールは、このジャケットのようにアウトドアモチーフなどをデザインソースとしているブランドで、展示会やコレクションなどには登場しないのが特徴です。
──展示会に登場していないブランドと、どうやって出会うのでしょうか。
このノーロールに関しては、もともと知り合いがやってるブランドなんです。基本的に、僕らは友達とか知り合いのブランドからセレクトすることが多いですね。作り手の顔が見えるというか、作っているひとの本質がわかるブランドとお付き合いするというか。なので、面識がないブランドの方から「展示会来てください」とダイレクトメッセージをいただいても、そこに手を出すことは少ないですね。
0→1ではなく、1を収集してテーマを与える
──ところで、オリジナルのアイテムはあまり作られていないんですか?
ええ、僕らはあくまで好きなアイテムをセレクトして、整理して、再編集するというやり方をとっています。自分たちで製作すると、どうしても店に置いてあるアイテムに近づいてしまうし、それを超えることは難しいので。そのへんは割り切って、餅は餅屋というか、デザインならデザイナー、グラフィックならアーティストなど各分野のプロに任せたほうがいいかな、と。
──では、プロが手掛けたアイテムを集めて、テーマを用意して見せるという手法なんですね。
はい。意識としては、なにもないところから形にする、つまり0から1にするのはデザイナーやアーティストの仕事。その完成した1を集めて転がしていって、大きくなった数字をまとめ上げるのが僕らの仕事という感じでしょうか。その出来上がったアイテムの販売は、僕らの店で出来ますから。そう考えると、だからアパレルブランドではなく、セレクトショップをやっているのかもしれないですね。
新たな販売チャンネルの構想も
──サプライトーキョーのオープンから10年が経ちますが、開始当時と比べて現在の心境はいかがでしょうか。
やっぱり10年も経つと、いろいろと感覚は変わってきますよね。正直、僕ら自身がやりたいことって、すでに出来ちゃっているんです。でも現状うまくいってるからといって、頭でっかちになるのもよくない気がして。「これはやらない」とか変なプライドも出てきたりして、そういうのって邪魔だったりすることも多いんです。なので、今後はいらないものを排除して、新しい感覚を吸収していきたいと思うこともありますね。
──具体的には、どんなアクションを起こそうと考えていますか?
たとえば若いスタッフを雇って、いまの店とは違うチャンネルで店をやったりとか。若いスタッフがいる店には若いお客さんが来るので、そのためのモノを仕入れたりできますし。そこに僕らのエッセンスを入れつつ、逆に僕らにないエッセンスを取り入れたいです。バイイングはまだ自分でやりたいですけど、新しい店では徐々に僕らは前に出なくなって、若いスタッフに店頭を譲るとか。どうせ始めるなら、いまの僕らだけでは出来ないことにチャレンジしたいですね。
長時間の取材を通じて、服に対する深味さんの愛情がひしひしと伝わってきました。服にやどるストーリーを理解し、テーマを設け、店頭やオンラインストアで提案する。「好きな服を集める」から始まった深味さんと井岡さんの店作りは、今後も目が離せそうにありません。服が大好きで、唯一無二の上質な服を見つけたい! という方はぜひバックドアを訪れてみてください。その背景のストーリーにまで共感できる1着に、きっと出会えるはずです。
BACKDOOR / SUPPLY online store
【住所】東京都渋谷区元代々木町8-7 B001
【営業時間】13:00〜18:00※新型コロナウイルス感染拡大により変更の可能性あり
【定休日】水曜
【TEL】03-6804-7037
【URL】Instagram Twitter facebook
【Online Store】SUPPLY TOKYO
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