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グラフィックデザインが身近になる、新しい趣味。富ヶ谷の「Letterpress Letters」で“欧文活版印刷”をはじめてみたい

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国内では貴重な欧文活版印刷スタジオが、代々木上原のご近所・富ヶ谷にある。その名も「Letterpress Letters(レタープレス レターズ)」。1時間2000円程度の使用料を払えば誰でも使用でき(※)、ポスターでもポストカードでも名刺でも、オリジナルの印刷物を自分の手で作ることができる場所。スタジオは未経験でも併設のカフェ「Letterpress Letters Canteen(レタープレス レターズ カンティーン)」を利用したことがある!という人も少なくないのでは。

※プルーフマシンでの印刷経験がない方は、まず同店のワークショップにご参加ください。

セルフ活版印刷スタジオ「レタープレス レターズ」

「レタープレス レターズ」は、エディトリアルデザインを手がける「細山田デザイン事務所」の代表でアートディレクターの細山田光宣さんとブランドディレクターの細山田亜弥さんが主催する“活版印刷(レタープレス)の制作スタジオ”。ここでは、アメリカやドイツなどで生産された古い印刷機と木活字や金属活字(活字:活版印刷に用いられる文字のこと)を使ったグラフィックの制作、レイアウトからプリントまでを自分自身で手がけることができます。

仲良しな細山田夫妻。「細山田デザイン事務所」の代表でアートディレクターの細山田光宣さん(右)とブランドディレクターの細山田亜弥さん(左)

「レタープレス レターズ」にあるヴィンテージの木活字の一部

“レタープレス・プリンティング”、すなわち活版印刷とは、凸の版をつくり、それをならべてインクをつけて、紙に写していく印刷手法のこと。欧州では、1445年、グーテンベルグによる活版印刷機の発明からはじまり、約500年にわたり普及した印刷技術でしたが、1970年代からはじまる印刷のデジタル化にともない、商業印刷の主軸からははずれていきました。

しかし、この手法ならではの味わいが魅力的で、今もなお愛され続けているレタープレス(活版印刷)。

近頃、日本人的に“活版印刷”ときくと、どこか懐かしいイメージや奥ゆかしいシックな印刷物を思い浮かべる人も少なくないかもしれません。もちろんそれも間違いではないけれど、「レタープレス レターズ」が提唱するのは、単なるレトロではなく、デジタル印刷が主流の現代だからこそグラフィックデザインの可能性を感じるレタープレスの在り方。

紙に限らず透明のシートにもプリントできるらしい…! イラストと重ねて飾るのも可愛い。

地下にある「レタープレス レターズ」のスタジオ

【写真左】木活字(ウッドタイプ)。手彫りで作られていて、制作者の個性を感じる書体もしばしば。木は金属よりも重量が軽いので、大きめサイズに適している。【写真右】金属活字(メタルタイプ)。ウッドタイプと比べてプロダクト的なきちんとした書体が多い。また、すごく小さなサイズの文字のものもある。

「レタープレス レターズ」のスタジオには、1960年代に作られたヴィンテージのレタープレス機4台と、木と金属のアルファベット活字140書体以上がそろっている。活字の多くはイギリス、アメリカ、ヨーロッパなどのヴィンテージのもの。 古物ゆえ、⼀部が⽋けていたり傷があったりするのもありますが、これもレタープレスの魅⼒。これらの備品はすべて、書体好きの細山田光宣さんが何年もかけて収集してきた貴重なものです。

上の2つのピースは、活字をつくる元になる父型(パンチ)

印刷機と活字とインクと紙で仕上げるレタープレス。その手法は非常にアナログでシンプル。制作物のデザインデータも不要なので、スタジオに来て活字を並べて凸の版を組めば印刷可能。頭の中にはイメージがあるけれど、パソコンや機械操作が苦手……という人にもおすすめです。「レタープレス レターズ」で使用している印刷機・プルーフマシンの使い方さえ覚えてしまえば、自分なりのグラフィックを追求していくことができるはず。

活字を選んで、印刷機に並べて固定する(文字組みする)。このあとインクをのせて、印刷します。

取材時にスタジオを利用していたMakoto Yamadaさんは、時計の文字盤を製作中。青でプリントされている箇所が先ほど文字組みしていた部分。この方は何回かプリントを重ねて、この文字盤を仕上げていました。

そして、このプルーフマシンが使えるようになるとアメリカやイギリス、オランダなど世界のレタープレススタジオでも楽しむことが可能に。細山田夫妻は、海外旅行にいくと必ずといっていいほど現地のレタープレススタジオをチェックし、実際に訪れてレタープレスを楽しむことも旅行の醍醐味のひとつにしているのだとか。

スタジオで細山田さんが見せてくれたのは、海外のレタープレススタジオが紹介されている本

「日本では珍しいレタープレススタジオだけど、アメリカをはじめ、世界の国々にはパブリックなスタジオが各所にあり、そこでは子どもも大人もレタープレスを楽しんでいるんです。週末に小学生が集っていたり、社会人が仕事帰りに寄ってレタープレスしたり。趣味のひとつとして親しまれている感じかな」と細山田さん。

クリエイションは、センスのいい人たちの特権、なんて無意識に思い込んでいる人も少なくない気がする。だけど、もっと自由に自分のデザインや創作を楽しんでいいんですよね。

 

気になったら、まずはワークショップに参加してみよう

ワークショップのタイムスケジュール(参考)

主に「活版ポスター制作」と「活版名刺制作」の2つのワークショップを開催。

「活版ポスター制作」のワークショップでは、活字を選び、文字組みをしてグラフィカルなポスターをデザイン。ポスター制作を通して活字の組版とプルーフプレスでの活版印刷の基礎を学ぶことができます。もう一方の「活版名刺制作」のワークショップでは、まず4種類のフォーマットから好きなデザインを選び、スタッフが樹脂版を作成。その樹脂版を使って名刺を作りながら、活版印刷の基礎を学べます。それぞれ初心者におすすめのワークショップなので、レタープレス未経験の人も気兼ねなく参加してみて。

>>ワークショップの詳細はこちらから!

 

細山田夫妻のレタープレスへの思いと、毎年恒例の富ヶ谷・上原マップのこと

かねてより「細山田デザイン事務所」の看板を掲げ、30年以上エディトリアルデザインを手がけてきた細山田光宣さん。どんな経緯でこの「レタープレス レターズ」をはじめたのだろう?

子どもの頃からポスターや文字(書体)が好きで、それを仕事にしようと美大に進み、自分の原点とも言える“書体”を軸にしたデザイナーになったという細山田光宣さん。デザイナーをしながら、レタープレスのスタジオを開くきっかけとなったのは、かつてデザインを学びにニューヨークを訪れた際に、アメリカのパブリックなレタープレススタジオやリベラルなアートカルチャーを目の当たりにしたことが大きいそう。

「先程話した内容と少々重なりますが、アメリカではイデオロギーに関係なく様々な地域に活版のスタジオが点在しています。調べてみると、公的に市が運営しているレタープレススタジオもあって驚きました。アメリカに限らず、イギリス、イタリア、オランダ、ドイツなど、西欧でも誰でも使えるような開かれたレタープレススタジオがあるし、ミラノでは毎年レタープレス愛好家のワーカーズサミットなんていうのもあるほど。小さなコミュニティーで作って、小さなコミュニティーで楽しむ。ある種のストリートカルチャーのように存在していると言えば伝わりやすいかな。それでふと、自国について考えると日本にはそういったスポットはないなあと思って。それなら自分たちでやってみようと思ってはじめたのが、この“レタープレス レターズ”なんです」(光宣さん)

書体好きが高じて、光宣さんがかねてより活版印刷機と活字を収集していたことも、スタジオオープンの要になったということは言うまでもなく、「こんなに集めているんだから、仕舞い込んでいるのは勿体ないし、パブリックなレタープレススタジオを開いて生かせばいい」という亜弥さんの後押しもあった様子。

事務所の壁際には、ずらっと天井近くまで積まれた箱。スタジオで制作したカードが収納されている。

ブランドディレクターとしてレタープレス事業に携わる亜弥さんがお菓子を学んでいたこともあり、カフェの併設も実現。カフェ「レタープレス レターズ カンティーン」のお菓子や食事メニューはすべて自家製で、こだわりのコーヒーとの相性も◎。ティータイムの利用はもちろん、朝8時から営業しているので、モーニングやブランチ、ランチ利用もおすすめ。

併設のカフェ「レタープレス レターズ カンティーン」。美味しくて居心地よくて最高! テラス席と1階席(写真)だけでなく、吹き抜けの2階席もあります。また、レタープレス レターズオリジナルのプロダクト、グリーティングカードやノートブックなどもこちらで購入可能。「レタープレス レターズ」のワークショップやスタジオ利用に関する質問もどうぞ。

「このカフェは美術館にあるカフェみたいなイメージでつくりました。コーヒーと本、コーヒーとレコードみたいな感じで、“コーヒーとレタープレス”という組み合わせもなんかいいなと思っています」(亜弥さん)

「一般的な印刷所は、どちらかと言えば人目につかないところで運営されていることが多いから、そもそも印刷所という存在を知らない人もいる気がする。だけれども、こうして路面にカフェを併設したり、開けたところにキャッチーな間口を設置することで、ふと興味をもってもらえたり、知ってもらって、足を運んでもらえるきっかけになればいいよね」(光宣さん)

 

そして、「細山田デザイン事務所」「レタープレス レターズ」の活動の1つとして、我々ACT LOCALLY(アクト・ローカリー)が見逃せないのがこちらのマップ。

富ヶ谷〜代々木上原「ネイバーフッドマップ」、通称:ご近所マップ。

専用のケース(封筒)も制作していて、この正方形の中央に差し込まれているのがマップ本体。毎年みんなで手作業で組み立てているそう!

細山田夫妻をはじめ、スタッフで、富ヶ谷〜代々木上原エリアのグッドスポットを紹介する地図「ネイバーフッドマップ」を毎年更新しながら制作し続けている。2024年度のものは、第15版。

「このエリア(富ヶ谷・代々木上原界隈)には、良いスポットだけど、なんとなく訪れただけだと見逃されてしまうような素敵なショップや隠れ家的な飲食店も多い。僕たちが愛するこの街のいいスポットをより多くの人に知ってもらいたいと思って作り続けています」と光宣さん。主にデザイン事務所やお店とやりとりのある関係者やお客さんにグリーティングレターとしてお送りしているものだそうですが、「レタープレス レターズ カンティーン」で一声かければもらうこともできるそう(在庫が無くなり次第終了)。気になる人は、ぜひ問い合わせてみて。

 

パブリックな印刷スタジオ「レタープレス レターズ」

“アクトローカリー”のイニシャル「A・L」の木活字を並べてみる。

“ものづくりは、もっと自由に楽しんでいい。気兼ねなく自分のための印刷物を作ってみよう”

富ヶ谷のクリエイティブスポット「レタープレス レターズ」と出会って、創作は決して一部の限られた人たちのものではなくて、身近でパブリックな存在であることを教えてもらった気がする。まずは、ワークショップに参加してプルーフマシンの使い方を学んでみよう。1枚の印刷物をこんなにも愛おしく思うなんて…! と身をもって実感できるはず。自分1人でも印刷機を扱えるようになったあとは、“レタープレス(活版印刷)”というカルチャーがコミュニケーションとなり、日々の中に新たな楽しみが生まれていきそうです。

ちなみに筆者はじめ取材陣は、紙好き・アート好きではあるものの、肝心の“レタープレス(活版印刷)”は未経験。超初心者なのですが、取材を終えるころには興味津々。一同ワークショップのチラシをもらい、WEBで予約方法を見るなど各々の新しい趣味と出会うこととなりました。

Letterpress Letters

【住所】東京都渋⾕区富ヶ⾕2-20-2

【営業時間】カフェ 08:00〜17:00/スタジオ 10:00〜19:00

【定休日】日曜・月曜  ※カフェ「Letterpress Letters Canteen」の営業も同様

【電話】03-6407-0015

【メール】letterpressletters@hoso-de.com

【WEB】 HP / Instagram

 

 

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