ブレイク前夜のブランドが集うショップ
すでに欲しいもの、が決まっている場合はネットショッピングが便利です。
その分、新しく何かに出会って、グッとくるみたいな体験はなかなかネット上だけだと得難いものだったりします。
案外多いのは、友だちが着てる服が「え、なにそのみたことないロゴのシャツ、いい感じ」とかで発見するパターン。だけど友だちとあからさまに同じ服を買うわけにはいきません。
そこで!代々木上原には、「なんだか見たことない、いい感じの服を着てる友だち」のようなセレクトショップがあるのです。
お店の名前は「タテイスカンナ」。
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お店のSNSをざっと眺めてみるだけでも、「見たことない服やアイテム」ばかり。そしてフォロワー数が、Instagram:12000人以上、Twitter:7000人以上と、けっこうな数です。
店舗は、おいしいドーナッツで有名な「ハリッツ」の向かい側にあります。代々木上原駅からは徒歩5分ほど。
こちらがスタッフのカツさん。お話を聞かせていただいたオーナーの鳥羽さんはお写真には写らずですが、渋谷のラジオに出演していたり、藍染工房を運営していたりと多岐にわたって活躍している方です。
「タテイスカンナ」がどのような基準でセレクト・買い付けを行っているのか。また、SNS運用のコツについて、話を伺いました。
セレクトのスタンスはインディーズバンドや地下アイドルの追っかけ?
ーWEBサイトの説明で「雰囲気や」とありますがタテイスカンナはつまるところ何のお店なのでしょうか?
鳥羽:はじめは今ほどアイテムの数も多くなかったので、雰囲気やとかって「うまいこと言った」感を醸し出していたのですが、4年経った今では完全に「洋服屋」ですね。
ーまっすぐに洋服屋さん。
鳥羽:アイテムの量も増えてきて、ある日気づきました。あ、これ洋服屋さんだ!って。
ー主に、どのような服やアイテムを取り扱っていますか?
鳥羽:これも、開店当初からは変化してきてるんですけど、独立してお店はじめたてのころは「売れるもの」より「売りたいもの」を売ろうと意気込んでいたんですね。その前は会社勤めでバイヤーをやっていましたから、比率としては9割売れ線のもの、1割は自分が売りたいもの、ぐらいのバランスでした。
ー商売を成り立たせるためには必要なバランスですよね。
鳥羽:なんと言っても自分のお店なので、そこは100%「売りたいもの」でいこうと。意気込みまくっていたのですが、今は何なら100%「売れるもの」を買い付けてますね。
ーえ!そうなんですか!(笑)
鳥羽:まぁそれはちょっと言い過ぎましたけど、自分もスタッフのカツも「これは絶対欲しい!」と思うものって、あんまり売れなくて(笑)。自分たちの感性みたいなものは信用ならないなと….
ー見たことのないブランドの服がたくさんあって、そこはこだわっているポイントですか?
鳥羽:あ、それはありますね。立ち上がったばかりの新しいブランドを扱わせてもらうことも多いのですが、その際に「ウチで扱うのは(ブランドが)大きくなるまでね」と。たとえば2年目とかでも大手のセレクトショップで取り扱いが決まれば、うちではやめます。
ー売上を考えると、ブレイクしはじめたブランドも置いたほうがよさそうですが…
鳥羽:BEAMSにおいてあるものは、BEAMSで買ったほうがいいじゃないですか。ショッパー(紙袋)とかもかっこいいし。なのでここみたいな個店でしか買えないもの、ここだからこそ出会えるものを扱わせてもらうことがお店の存在意義なのかなと。
ーインディーズのバンドをメジャーデビューするまで応援して、デビューしたら快く送りだす、みたいな。
鳥羽:ああー!そうですそうです。だからね、地下アイドルの追っかけの感じかもしれないですよね。無事に売れてブレイクしたら、また次の推しを探すみたいな。延々とその繰り返しです。
ーつまりタテイスカンナではブレイク前夜のブランドに出会える場所でもあるということですよね?
鳥羽:そのとおりです!
都内でも地元でも。どこへ行っても自分らしくいられる服
ー洋服やアイテムのジャンルでいうとどういったものが多いですか?
鳥羽:基準としては、気張らない服ですかね。例えば高校生の頃とかって、地元から夜行列車に乗って東京にきて買い物したりしてたのですが、そのときの格好って持ってる服の中で一番お洒落だとおもうものを着てくるじゃないですか。
ーはい。目に浮かびます。
鳥羽:それはいいんですけど、今度は東京に住み始めたら、都心では寝間着同然の格好で出歩くのに、たまに地元帰るときに必要以上にお洒落しようとしてる自分に気づいたんですよ。
ーたしかに地元帰るときって「東京から帰ってきてまっせ(ドヤ)」感は出ちゃうかも…
鳥羽:そこで気張っちゃうのも不思議だなとおもって。もともと楽な格好が好きなんですけど、行く場所に関わらず、クローゼットとかにも適当に放り投げておいて、パッと手にとって着たらああ、なんだかいい感じじゃんってものを扱いたいと思っていますね。
ーざっとみた印象ですが、アウトドアに良さそうな服も多いような気がします。
鳥羽:+1の要素がある服が多いかもしれないです。その機能性が結果的にアウトドアにもいい感じ、みたいなパターンですかね。水弾くよ、とか、蚊がこないよ、とかすごい伸びるよ、とかポケットがものすごくついてたりとか。
Anti-mosquito Tee
ヒノキやユーカリなど、蚊が寄り付かない成分をマイクロカプセルに封入し、繊維の奥に仕込みませることで洗濯を繰り返しても効果が長持ちする、タテイスカンナオリジナルの画期的Tシャツ。
SNSでは、敬語を使わない
ーSNSの発信のことも気になっていて。文面など、惹きつけられるなーとおもいました。
鳥羽:いま、スタッフのカツに担当してもらっていて。働きはじめてもらって最初に教えたのがSNSのコツだったとおもいます。
ーやはり、独自のルールみたいなものがあるのですね。
鳥羽:そうですね。徹底しているのはテキストのなかで「敬語を使わない」「違和感を残す」こと。この2つです。
鳥羽:InstagramもTwitterも、1投稿1秒かけないぐらいで眺めるじゃないですか。「これが発売になりました」とかってありきたりな文章だと確実にスルーされてしまいます。テキストの書き方的には、句読点や改行の位置を変えてみたり、「今の季節はこれでしょ」って極端に言い切ってしまったり。
ーそもそもSNSが得意な理由はなぜなのでしょうか?
鳥羽:もともと文章書いたりするのも好きなんです。
店を立ち上げるまえの、“あるバイト”をやっていたことでテキストだけで人を動かすスキルを身につけましたね。
ー何のバイトですか?
鳥羽:これあんまり人に言えないので伏せ字にして欲しいんすけど
◯◯◯(ピー)の◯◯◯(ピー)です。
ーああ〜なるほど!(笑)
鳥羽:でもその前からブログとかもよく書いてたんです。下ネタも包み隠さず書いていたら、親戚のオバちゃんも読んでることが発覚してブログやめましたけど(笑)。
タテイスカンナ イチ押しのブランドとアイテム
続けて、タテイスカンナが取り扱っているイチ押しのブランドを教えてもらいました。
※掲載アイテムは、取材時の取り扱い・価格となります。各アイテムは点数に限りがございますので、気になる商品の詳細は店舗までお問い合わせください。
〈Y.O.N〉
鳥羽さんが「バイヤーをやってきた12年間、これまでみてきた服でいちばん作りが良い」と太鼓判を押すブランド〈Y.O.N〉。もとは〈キャッチボールアンドサンズ〉だったのが、昨年2017年から名前を変えてリニューアル。
おおざっぱに脱ぎ捨てても、シワになりにくく、楽に扱えるけど着るとサマになるタテイスカンナらしいアイテム。
「生地やボタン、そんなところお客さんみてないよってところまで徹底的にこだわっています。デザインもシンプルながら、どこかにギミックが入っていて、マルジェラぐらいの離れ業をやっておきながら価格もリーズナブル。昨年のTokyo 新人デザイナーファッション大賞も受賞していて、今後もたのしみなブランドです」
「このジャケットには、アウトドアウエアでよくつかうシームテープや保温素材をあえてジャケットにとりいれたりしています」
〈O.K.〉
インスタグラムでもひときわ目をひく、スニーカーが刺繍されたロンTやスウェットなどは〈O.K.〉というブランド。
「ここのデザイナーはもともとバッグのデザイナーで、トートバッグにカーテンがついてて、あけるとピエロがいるみたいなやたら独創的なものをつくっている人でした(笑)。あたらしくブランドをはじめるときいて、また変わったのくるかな…とおもったら超良くて」
「刺繍は全部手縫いで、ここまでやれるところってほとんど無いんですね。国内だと採算があわないので、バリの職人がつくってるんです。バリって観光地のイメージが強いですが、縫製業が盛んで、貧困層にとっての食い扶持だったりするので、現地で仕事を生み出しているのも良いです」
「もともとデザイナーがバリ好きで、仕事とはいえ現地にいくと盛り上がっちゃうらしく、スタッフたちも「ボス!ボス!」ってすごい慕ってくれるみたいでその勢いで「ボス縫えたよ!これでOK!?」ってきかれたら全部「オッケーオッケー!オールOK!」っていって日本にもって帰ってよくみたら縫えてないとこあって「全然OKじゃねぇ!」みたいな試行錯誤もあったみたいです(笑)」
もちろんお店に並んでいるのは、テンションで「OK」したものではなく、クオリティチェックを経ているもの。
〈O.K.〉秋冬の新作シリーズで、パタゴニアならぬ「革ゴニア」なるものも新たに登場しており、こちらも要チェックです。
※各アイテム数量限定のため、品切れの可能性もあります!
本藍染シリーズ(タテイスカンナ紺屋)
鳥羽さんは徳島の阿波藍染の第一人者のもとで修行を積んだ藍染職人でもあり、神楽坂に藍染工房を構えています。
さまざまなブランドとコラボレーションして、江戸時代から伝わる「天然灰汁発酵建てによる本藍染」を施したアイテムもずらりと並びます。本藍染はものすごく手間がかかる分、色落ち、色移りもしにくく、いま国内で出回っている95%の藍染風商品とはほぼ別物。
「藍染は、防虫・防臭・抗菌作用があって、クローゼットのなかにひとつでも本藍染の服があれば、虫がよりつかないです。臭いも、試しに夏場3日間ぐらいずっと藍染の同じシャツを着ていたんですけど、3日目ぐらいでようやくちょっと臭いだしたかな?ぐらいでした」
〈DEEPER’S WEAR〉
藍染のお話をきくと、先述したAnti-mosquito Tシャツ然り、タテイスカンナにあるアイテムには+αの機能性をもっていることに合点がいきます。もうひとつ見せてもらって面白かったのは、〈DEPPER’S WEAR〉のシャツ。コットンに撥水加工がされていて、レインコートのように水も油もはじく。白いシャツでもカレーうどんをガンガン食べることができるし、汗染みもできない。だけどふつうに洗濯はできるというスグレモノ。
個人的にInstagramでみてて、一目惚れしたメイドインUSAのスウェット。
〈AlexanderLeeChang〉
すでに著名で、大手のセレクトが扱っているものでも鳥羽さんとカツさんが「すごく好き」で変わらず扱い続けているものもあります。その代表的ブランドが〈AlexanderLeeChang〉。「100%売れ線だけと冗談半分でいいましたが、このマウンテンパーカーは問答無用で売りたいアイテムです」とのこと!
その他、帽子やキッズ服、時計などのアクセサリーも並んでいます。
タテイスカンナは古民家を改装してできているので、空間がほどよく区切られていて、他のお客さんだとかの視線も気にならずマイペースに商品を探せるのもよいです。至るところに商品が置いてあるので、宝探し感もあります。
タテイスカンナ
【住所】東京都渋谷区上原1-23-12
【電話】03-6804-9838
【営業時間】11時~20時(火~土)11時~18時(日、祝)
【定休日】月曜日
【WEB】https://tateisucanna.stores.jp
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