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「言葉に出来ないこと、それが花の魅力。」ex. flower shop & laboratory 田中彰

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それぞれのライフステージに合ったお花との付き合い方を提案したい。

―一方で、それぞれ特徴のある3つのエリアにお店があるわけですが、街の花屋としての意識もあったりしますか?

それはもちろん。それぞれの街でいろんなことを経験したい、試行錯誤したいという気持ちがあったので、全く違う街に違う特徴の店を出しています。例えば中目黒は若者が多いし、蔵前は浅草が近いので国際色豊かで、併設のカフェfrom afar 倉庫01は中国人・台湾人に人気です。上原は暮らしの質が高いお客さんが多いかな。

―全然お客さんの層が違うんですね。

そうですね。自宅用の花の買い方から違います。中目黒だと若い方がドライフラワーを買っていくことが多いし、上原のお客さんは比較的お花を買い慣れていて、2メートル位の枝ものをサッと買っていかれたりとか。家にそんなに大きな花瓶があるんだ……みたいな(笑)。そういった方は年齢も少し上ですね。

代々木上原の花屋 ex. flower shop & laboratory

―まさに花を買うとき、あまり手入れができないので「ドライになる花でお願いします!」ってオーダーしちゃいます(笑)。

それはまだ若い証拠(笑)。それぞれのライフステージでお花との付き合い方があっていいと思います。花は30代後半とか、40代からと言われるので。ある程度モノの消費が終わってから、コト消費の良さがわかってきて、人にあげるのにも「どうせ◯◯さん全部持ってるから、お花にしよう」とか。やっぱり、20〜30代って、みんなまだあんまりモノを揃えてないじゃないですか。だから、まずは残るものからスタートなんだろうなあ。僕たちもそれをフェイス・トゥ・フェイスで経験できるのはいいことなんですよ。

―なるほど……。

何か物足りなくなったときに「ああ、お花っていいな」って感じるんだと思うんです。もちろんドライも否定しないし、年配でドライを買う方も否定しないし、お花の付き合い方っていろいろですよね。

―店頭に立たれることもあるんですか?

ここからほど近い東京和茶房さんの入っているビルにオフィスがあって、普段はそっちにいます。スタッフのお昼を回す時間だけ交代して、基本は代表業務をしていることが多いですね。

―代表としての業務って、どんなものですか?

会社の事業戦略を考えたり、新しい取り組みの企画を練ったり、財務管理をしたりしています。あとは装花の現場。昨日も新潟に出張していたんですけど、ブライダルやブランドのイベントで生け込みをするときは案件によっては僕も行きますね。まだ現役でやっています。それに大田市場で仕入れを毎週月・水・金で。市場はいいですよ、元気をもらうので。

代々木上原の花屋 ex. flower shop & laboratory

―築地の魚市場は行ったことがあるんですが、花の市場は行ったことがないんですよね……。

花の市場はめちゃくちゃいいですよ! 仕入れに行く日は起きるのが4時、5時なんですけど、眠くても元気をもらえます。一切辛くない。花の仕事を始めて後悔は一度もしたことがないですけど、やっぱり一番それを実感するのは、市場で花を見ているときです。サラリーマン時代に9時に出社して、パソコン開いていたときとは全然違いますね。

―へえ、それはいいですね!

だから天職だと思います。365日ほぼ休みはないし、良いことばっかりでもないけど、そのおかげで辞めたいと思ったことはないです。

代々木上原の花屋 ex. flower shop & laboratory
 

霽れと褻(ハレとケ)で花屋として伝える、花の魅力。

―率直に、なぜ代々木上原にお店を出すことになったのか聞きたかったんです。

中目黒と蔵前のお店を運営していくうちに、オフィス機能が必要になったんですよ。それでとりあえず五反田にオフィス用の物件を借りていたんですけど、現場とオフィスが離れているとチームの一体感がなくなって、伸び悩んでしまうんじゃないかと思い始めて。中目黒や市場の近くも視野に入れて物件を探していたら、たまたまこの上原の物件が見つかったんです。調べてみると奥のスペースをオフィスに使えて、車も横付けできるから、いいなと思って。今はキャパオーバーになって、すぐ近くでオフィスを独立させました。

―最後にできたけど旗艦店となっているのはそういった理由があるんですね。

もちろん「代々木上原」と聞いて自分がワクワクするかは大事にしていました。友達も上原は良いと言っていたし、AELU(アエル)がオープンするときのWebサイトのお花も、実は僕が挿させてもらったんですよ。仕事しながらインプットされてきた上原のイメージが、すごく良かったんですよね。

「お店は、街の人々に育ててもらうもの」料理人・丸山 智博さん

―AELUとはどういったご縁で?

霽れと褻のオリジナル花器を作ってくれているSUEKI CERAMICS(スエキセラミックス)の矢野さんが、AELUでSUEKIのうつわを使った撮影をするときに、フラワースタイリングで入らせていただいたんです。それで代表の丸山さんに挨拶をさせていただいて。うちの広報もAELUが大好きで、この間はAELUで扱っている器をここでも展示させていただきました。

代々木上原の花屋 ex. flower shop & laboratory

―霽れと褻はどんな経緯でブランドを立ち上げたんですか?

僕のやりたいことをいくつも詰め込んでいるんですけど。

お花屋さんって、機能が2つあると思うんです。一つは、ブーケを束ねてお花を売ること。もう一つはお花の魅力や情報とか知識を伝える、メディア的な機能。でも、花屋業界全体の現状として、後者が全然アプローチできていなくて。やっぱり労働環境が厳しかったり、そもそもそういういった価値を伝えるよりも技術が優先する業界だったりというのもあって。とはいえお客さんと接していると、花についてめちゃくちゃ聞かれるんですよ。聞かれても簡単なことしか答えられないことがあって、これは良くないなと。だから、花の良さを伝えるためのメディアを作ることにしました。

これから、野菜や魚のように花の産地や農家さんを知る時代が来ると思うんです。だから、僕たちが仕入れる花は実際に農家さんのところに取材に行って、市場や仲卸のフィルターもなく、直接育てている人に聞いてそのままの情報を僕たちからお客さんに伝えたい。

その伝え方もWebじゃなくて、お花を飾る人をイメージしたとき、新聞みたいに机の上に広げて、花について知れたら素敵だなと思って。それで花と新聞の定期便というサービスが生まれました。ユーザーがそもそも知りたいことと、花屋自体の課題、業界、農家さんの課題も含めいろんな想いを込めているんです。

―単純に今まで伝える人がいなかったし、花屋が花屋として伝えることに意義があるんですね。

知りたい人は絶対いるし、花屋の在り方もアップデートしたいと思っています。

―霽れと褻の企画は基本的に田中さんが考えて、ライターさんにお願いするんですか?

写真も文章も、制作はすべて社内でやっています。花屋が最初から最後までやっていることがすごく大事だと思っていて。

―なるほど。花屋の目線で撮って、花屋の言葉で伝える。

それが僕たちBOTANICが考える花屋です。

代々木上原の花屋 ex. flower shop & laboratory 霽れと褻 ハレとケ

霽れと褻では、毎月一つの花と農園を特集。生産者のインタビューや花の飾り方などを掲載している

 

言葉に出来ないこと、それが花の魅力。

―今の季節だと、どんな花がおすすめですか?

やっぱり秋バラがいいですね。

―秋バラ、ですか。

バラは四季咲きで、春と秋が特にいいんです。日本は四季がはっきりしていて、だんだん寒くなると、紅葉みたいにバラも色が深くなるんですよ。逆に寒いところから暖かくなるときは、命の芽生えのようにフレッシュな色になります。同じ花材でも四季を感じられるのっていいですよね。

代々木上原の花屋 ex. flower shop & laboratory

堀木農園の秋バラ。堀木農園の代表の方は音楽が大好きだそうで、オリジナル品種には音楽にちなんだ名前がついている

―今年は天候が不安定でしたけど、花の仕入れにもいくらか影響があったんじゃないでしょうか。

霽れと褻の取材で直接農家の方の話を聞くと、「5年前はこうじゃなくても作れたのに」とか「10年前はこんな虫が出なかったんだけど」とかみなさん口を揃えて言うんです。
一般の人は異常気象のニュースを聞いて服装の対策をするくらいだけど、一次産業の農家さんは自分の生活に深く関わっているから身に沁みているんですよ。だから、今年は本当に異常なんだなと取材するたび思っていて。

―日々触れる生態系から危機感を感じているんですね。

そうそう。だから地球規模で本当にヤバいですよ(笑)。

―今年もなんとか夏を乗り切った気がしますけど、来年また何か起こるだろうし。

その中で僕たちはやることをやるしかないけど、環境問題はちょっと辛い気持ちにはなります。まあ。それを知ることができる職業でもあるんですけど。台風とかが来ても、自分ごとにできる仕事が素敵だと思っていて。震災があった地域の農家さんの花をちゃんと買ってユーザーに届けたいとか。自分には関係ないじゃなくて、繋がりを感じられるのはすごくいいですね。

―生産者の生活も見えている。

そうです。変な使命感に駆り立てられたりとか(笑)。それがやりがいですよね。

―そういう深いお付き合いができているということが素晴らしい。

いい花を作ってもらっての花屋なので。それを精一杯、伝えることが自分たちの使命だと思っています。

―最後になりますが、花の一番の魅力はなんだと思いますか?

会社のWebサイトにも書いてあるんですが、「言語化できないこと」ですね。「お花ってなんだろう?」って考えさせられることが、一番の価値だと思います。

―引き出しがすごくあるということですか?

そうなんです。最近、料理研究家の方と話していて、料理は「美味しい」って料理のための形容詞があるのに、花には「綺麗」とか「美しい」とか、人に対するときと同じ表現を使うじゃないですか。それに、美しさの基準も人それぞれで定量化できるものでもないし。

代々木上原の花屋 ex. flower shop & laboratory

―興味対象として尽きない、飽きないんですね。

そうなんです。本当に言語化できない。でもあえて言葉に表すなら、「人を幸せにする」かな。言葉にすると安くなっちゃうんですけど(笑)。でも、幸せも何なんでしょうね。例えば人が亡くなったときに花添えるのはネアンデルタール人くらいからやっているけど、それって幸せなのか?とか考えるんです。でも、プロポーズで花を渡すのは幸せだよなって。

―たしかに。その言語化できない意味をカバーしてくれているというか。

そうなんですよ。言語化できないからお花なんだろうなって。だから「お花って何?」って聞かれると答えられないんですよね。そこはイクスを続けていくなかで試行錯誤しつつ、受け取る側が何かしらの答えを見つければ良いわけで、答えを提示することが正解じゃないというか。お客さんがお花を買って、それぞれに楽しみ方を見つけてもらうことが僕たちにとっての幸せです。

代々木上原の花屋 ex. flower shop & laboratory

代々木上原の花屋 ex. flower shop & laboratory

〈SHOP INFORMATION〉
ex. flower shop & laboratory
住所:東京都目黒区駒場4-6-6 1F
電話:03-6317-7530
営業時間:11:00 – 20:00 定休日なし
URL:https://www.ex-flower.com/
Instagram:@exflowershop
Twitter:@ex_flowershop
Facebookページ:ex. flower shop & laboratory

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