不眠や疲れやすさ、肩こりなど、病気とまでいかない体の不調を相談できるハーバルラボがあります。名前は「yes エルブメディシナル」。ヨーロッパに古くからある“街のハーブ薬局”をイメージし、薬草や香りの知識を持った専門家が一人一人の症状に合わせた調合や施術を行なっています。
施術を行うのは、セラピストでフレグランスコーディネーターの山野辺喜子さん。ラボ以外にも全国各地でワークショップを開催し、アロマやハーブの使い方やセルフケアの大切さを伝えています。今回は山野辺さんに植物療法との出会いや、活動の経緯についてお話を伺いました。
20代で植物療法に出会う
──セラピストになった経緯を教えてください
小さい頃からアレルギー体質で、炎症やかゆみ、見た目で辛い思いをしていました。病院に通っても改善されず、自分で変えていくしかないとハーブの植物療法を試すようになりました。試すと2〜3年かかりましたが、波打ちながら体が変わって。そんな自分の経験を通じて、同じように困っている方の役に立てたらとセラピストの活動を始めました。
──植物療法を知ったきっかけは何でしたか?
当時通っていた整体の先生に「薬や通院よりも、食べるものや肌につけるもの、自分の心を変えていくことが大切」と教えてもらったんです。肌が弱く、自然なものや体に負担のないものに興味があったので、先生の一言がきっかけでアロマやハーブを学び始めました。
──どのように学びましたか?
アレルギーによいとされるアロマやハーブを試したり、本やネットで調べました。その後はアロマのスクールに通って、自分でスキンケアクリームやボディオイルを作っていました。
──スキンケアクリームやボディオイルも自作できるんですね
原料を混ぜるだけなので、工程はシンプルなんです。ただ、精油やハーブは薬にもなれば毒にもなるので、特徴を調べて、組み合わせの良し悪しを学んだ上で自己責任で使っていました。
その後、植物療法を教えてくださった先生に師匠になっていただき、整体やオイルマッサージを学びました。師匠を手伝いながらセラピストとしての活動を本格化させ、34歳の時に独立しました。
──ラボにはどんな方がいらっしゃいますか?
アレルギーや、ストレスを抱えてる方が多いですね。自律神経失調症など、通院で良くならなかったり、通院するような病気ではないと思われている方です。
──どんな施術を行うのでしょうか
最初に1時間程度のカウンセリングをして、2回目以降にその方の心と体に必要なアロマとハーブを使ったオイルトリートメント施術を行います。医療行為と違って、すぐに体を変えることはできませんが、日々の暮らしの中で起こっている出来事を伺い、一緒に不調の原因を探り、改善策を提案しています。
──どのようなお気持ちでカウンセリングや施術を行なっていますか?
私も辛かった時のことがずっと記憶に残っているので、悩んでいる方が楽になるためにできることはないかを常に考えていますね。困ってる方が元気になってくださることにやりがいを感じます。
予想外だったブランド立ち上げ
──ラボでは、オリジナルのスキンケア・アロマブランド “fragrance yes”を扱っていらっしゃいます。ブランド立ち上げのきっかけを教えてください
以前施術の仕事をしていた時に、オーガニックコスメを使って施術をしていましたが、私の肌には合わず手荒れがひどくなってしまったことがありました。自分が安心して使い続けられるものはどれなんだろう。肌荒れで困っているお客さんにおすすめできるものはどれなんだろう。悩む日々の中で、「見つからないなら私が商品を作るしかない!」と決心した時に、真っ先に思い浮かんだのが自分で作っていたスキンクリームでした。
──植物療法を学びながら作っていたクリームですね
そうです。オイルと蜜蝋、精油のシンプルな材料で気軽に作れるので、自分が納得できるものを作って伝えようと一人でワークショップを始めました。
ワークショップを行ううちに、「作ったスキンクリームを購入したい」という声をいただくようになって。最初は都度作ってお渡ししていましたが、数が増え、トラブルを避けるためにきちんとした形で販売できる体制を整えました。
──ワークショップ参加者の声から生まれたんですね。ブランド立ち上げではどんな準備をしましたか?
準備は、都度必要に迫られ、活動名やラベルデザインを慌てて友人に依頼し作り上げていった感じです。当時は毎日準備に追われていましたね。
商品はまずスキンクリームから作り、「エッセンシャルオイルも欲しいな、それならスプレーも必要かも」と自分が生活に必要とするものを作っていきました。今は、スキンケアやフレグランスなど全部で21種類のアイテムを取り扱っています。
──ブランド名の「yes」にはどのような思いが込められていますか?
自分の心と体を変えたくて、向き合い始めた日から今の活動が生まれました。 誰に何を聞かれても「yes」と答えられる活動をしています、というお約束の意味でブランド名を「yes」にしました。商品を手に取ってくれたみなさんにも、ふと立ち止まって「yes」と言える暮らしをしているか考えるきっかけになれたら嬉しいなと思っています。
yesの世界観を描いた一枚絵を切り取ってそれぞれのパッケージに。合わせると絵が完成する。
ギフトラッピング用のバッグもシンプルで素敵。
バーの会話から生まれたコラボも
──代々木上原周辺にラボをオープンした経緯を教えてください
ラボは最初に下北沢で立ち上げました。でも次第に手狭になり、落ち着いた雰囲気の代々木上原周辺で移転先を探していました。でもなかなか空き物件が出なくて。結局その時は赤坂に移転しましたが、数年後に知人に「代々木上原近くの物件をリノベーションするから一緒に使う?」と声をかけてもらったんです。「うん、使う!」と即答して移転が決まりました。
──こちらに移転して何年になりますか?
3年になります。知り合いを介して街の方との交流も増えてきました。知り合いに近所のバーに連れて行ってもらったら、たまたま隣の席が代々木上原の美容室の方で。バーでの出会いがきっかけでサロンオリジナルのヘアオイルを作らせていただきました。街をきっかけに縁や仕事が広がっているなと感じます。
──素敵ですね!いろいろな方との繋がりで活動が好転していらっしゃるように感じます
あまり社交的な性格ではないんですけどね(笑)。今自分がやってる活動に対しては結構自信を持って前に進んでる感覚があるので、思いを持っている方に共感していただきやすいのかもしれません。
コラボしてるアイテムの多くは、これまでの活動で出会った方と「いつか一緒にやろうね」と話したことがきっかけです。知人のフェスでワークショップをするとそこでの出会いが次の開催につながることも多くて。今は1ヶ月の半分は地方でワークショップを行なっています。
群馬県桐生市での出会いから生まれた山型のディフューザー。木工作家の井出裕太さんとコラボレーションプロダクト。
yesのラインナップにはハーブティーも。「チャージ」、「リセット」、「リラックス」の3種類から好みを選べる。
──代々木上原周辺でおすすめのお店があれば教えてください
仕事中のランチは、時間がないのでいつもこの辺で食べています。代々木八幡駅前にある蕎麦屋の「大野屋」や、洋食屋の「関口亭」によく行きますね。関口亭のとろけるハンバーグが美味しくてお気に入りです。
長年の開発を経た新商品
──今後予定している活動や商品があれば教えてください
今はシャンプーとコンディショナーの開発を行っています。ブランド立ち上げ時から商品化したいと思っていましたが、コストや使用感の問題で時間がかかってしまいました。毎日使うものだから自分が納得したものを作りたくて。もう少しで完成する予定です。
──シャンプーとコンディショナーは開発が難しいんですね
そうですね。シャンプーは天然素材だけで作るのはなかなか難しいので、素材の選定や調合バランスを取るのに苦戦しています。他の商品より化粧品科学の知識が必要なので、化粧品業界に長く携わっている方にアドバイスをいただきながら作っています。
商品開発の調合や蒸留はラボで行い、レシピが決まると工場で商品化される。ラボには蒸留機やビーカーなどの器材が並ぶ。
──以前に比べ、ナチュラルな素材やオーガニック商品を目にするように思います。今後も関心は高まっていくのでしょうか
自然素材をベースにした商品は、体に優しく安心感があるため、昔に比べて関心を持つ方が増えてきたと感じます。ただ、その反面、自然素材はどうしてもコストがかかってしまうため、手を出しにくいという声もよく聞きます。
作り手としてはその点が課題ですが、今の活動のようにコツコツと全国各地に伺って、みなさんのお役に立てるよう向き合って行きたいと思います。
納得できるものを追求し、伝え続ける山野辺さん。真摯な姿勢や揺るぎない信念が多くの方を惹きつけているのだと感じました。
4月は寒暖差や気圧の変化で不調を感じやすい季節。進学や就職などの環境が変化で知らずにストレスを溜めてしまうことも。そんな時こそ自分の心と体と向き合い、労わりたいですね。
アロマをお風呂に入れて香りを楽しんだり、ハーブティーを飲むなど、手軽にセルフケアできるのがアロマやハーブの魅力の一つ。気になる方はぜひHPをチェックしてみてください。施術を希望する方はinfo@fragrance-yes.comからご予約を。全国各地で行われるワークショップの詳細は、HPやInstagramに掲載されていますよ。
yes エルブメディシナル
【住所】〒151-0062 東京都渋谷区元代々木町27−6
【営業時間】予約制。詳細はInstagramをご確認ください
【MAIL】info@fragrance-yes.com
ALL PHOTOS:SHO KATOH
RELATED
関連記事