日本人のソウルフード「おにぎり」。
小腹が減ったとき、時間がないときにあると嬉しいおにぎりですが、改めて「おにぎり」って素晴らしい食べ物だなあと思います。梅干し、鮭、おかか、じゃこ、、どんな具材もど〜んと包みこんでくれる。その包容力の大きさたるや、どんな食事よりも特別な存在感があると思います。 займ мгновенно круглосуточно без отказа 1000
昨年1月、代々木上原にオープンした「一食」は、毎日10種類ほどのおにぎりとお惣菜を販売するテイクアウト専門のおにぎり屋さん。小さなスペースにぎっしりとおいしそうなおにぎりが並ぶ店内には、平日休日問わず、次から次へとお客さんが訪れます。
場所は代々木上原駅と代々木八幡駅、幡ヶ谷駅のちょうど真ん中。みなさんご存知「カタネベーカリー」の少し先、マンションの1階です。手前には餃子とコーヒーを提供するカフェ「FIL#」があります。この通りには日用雑貨店「àcôté(アコテ)」もあり、散歩するのが楽しいエリアですよね。
開業のきっかけは、会社員時代に体調を崩したこと
今年、1月22日に1周年を迎える「一食」の清澤さんに、どうしてこの場所で、どうしておにぎり屋さんを開店しようと思ったのかを伺いました。
清澤さんは関西出身で、代々木上原に引っ越してきたのは2013年のこと。小さな2人の子どもを育てながら働き、慣れない土地で過ごすうちに疲れが溜まってしまったのだと言います。
「下の子が保育園に入園して復職したものの、契約社員だったので働き方に疑問が生じてしまいました。夫も忙しくてワンオペの日々が続いたことで、精神的にも体力的にも限界を感じました。1週間くらい食欲と笑顔を失ってしまったんです。そのとき、東京にいた数少ない友達にヘルプを出したら、その友達がたくさん手料理を用意してポストに入れておいてくれたんです。それまでなかった食欲が一瞬でよみがえりました(笑)。誰かが自分のことを思って作ってくれた料理はこんなにおいしいんだなって、すごく救われました」
「世の中には同じように辛くて孤独な想いをしている人がたくさんいるかもしれない」
友達の手作りご飯に感動した清澤さんは、元気になったら自分も「食」を通して誰かの助けになるようなサービスを仕事にできたらと考え始めました。それからは一念発起。会社員を辞めて起業セミナーに通い、飲食店でアルバイトをし、自分のお店を作るための勉強をスタートしました。
「昔からなんとなく自分のお店を持ちたいなという憧れはあったんです。今自分にできることを考えた結果、おにぎりとお惣菜ならできそうだと。でもあの時倒れなかったらここまでのエネルギーは出なかったかもしれません。物件を探し始めたのは2018年頃から。自宅から自転車で15分くらいまでの場所を探して見つけたのがこの場所でした。理想よりは小さかったのですが、そんなに家賃も払えないですしね」
「一食」という店名は開業の一年前からあたためていたと言います。
「1日のうち、一食でもいいから、誰かの支えになるような、助けになるような食事を提供したいという想いで名付けました。ロゴデザインはMiracle Deluxeの馬場さん(パティスリービヤンネートルのロゴデザインなどもされています)。彼はブランディングもできる方なので、どんなお店にしたいかという想いをとても丁寧に汲み取ってくださいました。働くお母さんたちの助けになりたいという気持ちや、いつか子どもたちにもキッチンに立ってお手伝いしてもらえるような場所にしたいという気持ちなど、人に話すことで自分のなかでもワクワクしましたね」
「一食」の波線イラストは清澤さんのお子さんや、近所の子どもたちが手描きした波線を組み合わせたもの。柔らかい雰囲気が清澤さんのおにぎり屋さんととてもマッチしています。
テイクアウト専門の「一食」は、“冷めてもおいしいおにぎり”の味にこだわり、開業前には全国各地のあらゆる米や海苔を試食。清澤さんが選んだのは、旨味、香り、粘りのバランスがいい「あきたこまち」と、宮城県塩釜の黒々とした風味のある「今野商店」の海苔でした。ううむ、なるほど!冷めても美味しいのは使用する食材がポイントなのですね!
「一時は我が家が海苔だらけになりました(笑)。米に関しては、近所の西原商店街の柴田米店さんで精米したものを使わせていただいています。自分で精米をすることも考えたのですが、精米機は場所をとるし、何よりこんな近くにお米やさんがあることがラッキーでしたね」
「一食」では木を薄く切った紙のような「経木(きょうぼく)」におにぎりを包んでくれる。プラスチックの入れ物よりも何十倍もあたたかみを感じるのは日本人のDNAのせいなのか、とにかくグッときます。
「プラスチック製品は環境に負荷がかかるだけでなく、テイクアウトした後の罪悪感も増すように思います。一食ではできるだけ使用しないようにしています」
「最初は経木で巻いてゴムで留めていたんですけど、柴田米店のお母さんが、『経木の端っこを切るとヒモの代わりになるのよ』と教えてくださったんです。代々木上原新参者の私にとって、商店会に所属したことで、より地域の方々との繋がりができたことが嬉しかったですね。代々木上原は都会なのに昔ながらの商店も残っていて、なんだか落ち着きます。そして、何よりお客様と接していて感じるのは“質を大切にしている”方が多いということ。そして、“品の良さ”。オープンしてから今まで、接客で嫌なことって一つもないんです。食べるものに気を使っている方も多いと感じますし、そのぶんこちらも気が引き締まります」
「添加物の入っていない安心な食べ物が人を救うと思う」
毎朝45個、1日に100~120個おにぎりを握る清澤さん。握り方のこだわりを伺うと「赤ちゃんの手を握るように」とのこと。
「赤ちゃんの手ってふわっとしているじゃないですか。お米も同じようにふんわり手を添えるくらい優しく握ります。握るというよりは形を整える感覚ですね。玄米おにぎりは5歳児の手を握る感覚。少しだけギュって。これは聞いた話なのですが、野菜ってずっと同じ土壌では育たないらしいんです。でもお米は何年も何百年もずっと同じ土地で育つことができる。お米は奪わず、与えてくれる植物ということに感動を覚えて、お米もご飯も優しく扱わないと、と思うようになりました」
おにぎりは1個180円〜250円ほど。「おかずセット」は唐揚げと卵焼きがついて650円と代々木上原という場所を考えるとリーズナブル。惣菜もグラム単位ではなく、一人分での値段表記なのでとっても親切です。
「とはいってもコンビニに比べたら高いんですけどね。それでも、添加物の入っていない安心な食べ物が人を救うと思うので、週5日使ってもらえる気軽な価格設定にして頑張ろうと思ったんです。残業で遅くなった方とか、外食ばかり続いている方とか、そういう方にも食べてもらいたいので、本当は営業時間をもっと長くしたいです。それは今後の課題ですね」
取材の途中、「今日は寒いですね〜」とお客さんとおしゃべりを楽しんだり、「唐揚げ10個お願い!あとでまた来るね〜」という常連客のために揚げものをしたり。清澤さんは終始笑顔でイキイキと楽しそう。「この一食で誰かを元気にしたい」。そんな想いがお店中に充満していました。愛情のこもったおにぎりって、どんな高級料理よりもおいしく感じるんですよね。
「こないだ常連さんに、いつも楽しそうに料理してるわね〜って言われたんです。窓から丸見えなので(笑)。お料理が得意なわけではなかったんですけど、初めてみて料理がすごい好きだってことに気づいたんです。もうすぐオープンして1年ですが、やってよかったと思いますね。コロナも収束しないですし、大変なことも多いけれど、少しでも誰かの支えになれるよう続けていきたいと思っています」
一食
【住所】東京都渋谷区西原1丁目7−8 ツインパレスKI
【営業時間】平日 8:30-17:00 土日祝 不定休
朝セット(限定10食) 9時過ぎ〜おかずセットスタート
【TEL】03-6873-9120
【WEB】Instagram
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