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大変とは「大きく変わる」と書くんだよ。「リトル・ディッパー」店主・小林良男さん【いま、これから、代々木上原 vol.1】

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世の中がネガティブな状況に陥った時に、自身を突き動かすのは「好き」であること。

「好き」を仕事にしている人たちが、さまざまな状況を踏まえて「いま、今まで、少し先の未来」を、どのように考えているのか?

ここ代々木上原という地で、未来を見つめる人たちにフォーカスしていく新連載【いま、これから、代々木上原】

第1回は、富ヶ谷にて昼はランチ、夜はバーをお独りで営む「リトル・ディッパー」のマスター・小林良男さん。彼に「おんぶされると運気が上がる」という噂もあり、著名人も多く来店するという、創業35年の伝説的なお店。

去年初めて取材をしてから約1年ちょっと経過。リトルディッパーを再訪してみると、「いらっしゃい!」と以前お会いしたころと変わらない素敵な笑顔! そしてルービックキューブを差し出してきたマスターの小林良男さん。一体何が起こったのか?

「おんぶしてみんなの運気をアゲる!代々木公園のオヤジ」 リトル・ディッパー小林良男さん


リトルディッパー 小林良男 富ヶ谷

「大変」とは、大きく変われるチャンス

――前回の取材から1年ちょっとご無沙汰していましたが、リトルディッパーと小林さんに何か変化はありましたか?

新型コロナ感染拡大の影響でお客さんが少なくなってから、暇つぶしにルービックキューブから、パズル、トランプ手品までいっぱい覚えたよ! みんな知っていて一度は触ったことがあるけれど、なかなか攻略できない、いい遊び道具。

これらの道具は、感覚だけでは解けない法則がある。だから自分なりにわかりやすい方式を図面に書きながら、お客さんに披露して教えてあげると喜んでくれる。

リトルディッパー 小林良男 富ヶ谷

忙しけりゃ何も考えないかもしれないけど、暇な時は自分に何か肥やしになるものを考えなきゃ。7年くらい前にもお店が暇だった時にバルーンアートを始めて、サービスのひとつになったし。

ダーツや、ヨット、パラグライダーも、元々はお客さんがやっている話を聞いたことがきっかけで始めて、お店の遊具や自分の趣味が増えた。

「パラグライダーってなに? 面白いの?」
「今度はいつ行くの? よかったら俺も連れてってくれない?」

そういう風にどれだけ興味を持つかで、新しい世界が広がっていく。自分が心から楽しめば周りの人たちも楽しんでくれる。よく「チャンスがなかった」と嘆く人がいるけど、それはチャンスだと思わなかっただけであって、チャンスはどこにでも転がっているもの。

ルービックキューブや手品を始めたら、66歳の自分がどこまで記憶できるか挑戦できてお客さんの楽しみも増えた。手先を使えて、ボケ防止にもなるし(笑)。

「大変」という言葉は「大きく変化する」って書くんだよ。今、まさしく大変だろ? そんな時は愚痴ばっかりこぼしてないで、自分から新しいアクションを起こす絶好の機会と捉える精神が大事なんじゃないかな。

リトルディッパー 小林良男 富ヶ谷

できるからやるのではなく、好きなものをやる。

――お酒や料理、お菓子を作って、人とお喋りをする…自分の趣味を仕事にしているマスター。お店をオープンしてから長い間、好きなことを仕事としてやり続けられているのは、なぜだと思いますか?

日本人初のメジャーリーガーだったイチローが、「どうやったら、そんなにスゴい記録が作れるの?」という中学生からの質問に対して「好きだからやめなかった。辞めなかったからたまたまそういう記録が残った」って答えたんだ。

彼のように、“できる”からやるんじゃなくて、“好き”なものをやった方がいい。なぜなら、できるものをやっていると、できなくなった時にやめてしまう。でも、好きなことなら、周りに何を言われようが続けられるものだと思うよ。

リトルディッパー 小林良男 富ヶ谷

詩人ゲーテの「愛されるよりも、愛したかった」という名言もあるように、他人の意見は、心の中にある“愛する”という気持ちまで入ってこれないから、いつまでも好きな想いを残せるんだ。好きだから仕方ない。

他人に「やっても無駄だよ」と言われても、「私は無駄にはしない」と頭に浮かべると、「何ができるだろう?」と前向きにアイデアを考える脳に変わって、行動も変わる。起業して成功する人は、そういう思考ができるタイプだと思うよ。

結局、自分の中から全てが起こる。このお店だって好きだから楽しいし、いつまでも楽しめるにはどうすればいいかを常に自分で考えているよ。「このオヤジが楽しそうだから、自分も楽しくなる」そう思って、お客さんは通ってくれてるんじゃないかな。

リトルディッパー 小林良男 富ヶ谷

発信すること。それこそが“生き延びること”

――お店をオープンして35年もの長い年月で、いいことだけでなく時にはピンチな時もあったと思いますが、小林さんはどのように苦境を乗り越えてきたのでしょうか?

お店の羽振りがよくなった時期に、本業ではない先物取引に手を出して、大失敗したことがあったの。本業の飲食とは関係ないことをやったから、「お前がやりたいことはなんだ?」って、神様からしっぺ返しがきたんだと思う。大損したおかげで、自分がやるべき仕事をあらためて再確認できたから、今となってはいい経験だった。

リトルディッパー 小林良男 富ヶ谷

お店が厳しい状況になった時は、カラ元気に振舞うようにしていたよ。自信なさげに小声で言うんじゃなくて、大声で発散するくらい「暇だ〜。どうしようかなぁ〜?」って訴えるの。そうすると「何かあったの?」と、周りの人たちが寄ってきていろんな方法で手を差し伸べてくれたよ。

悩みや弱さを心の内に秘めたままでいると誰も気づいてくれないし、ただ「暗い奴だ」と思って遠ざかってしまう。カラ元気に素直に打ち明けて、耳を傾けてくれる人に助けを求めればいい。どんなに優れた人も、ひとりじゃ生きていけないから。

いいことも悪いことも、なんでもかんでも発信することが生き延びることにつながる。まさしく、それが人生ってもんでしょ?

不安や悩みは、起こってから考える。

――もしも、悩みを抱えた時には、どうすれば立ち直れるのでしょうか?

話を聞いてくれる人がいなくて、悩んでいる人も多いらしいね。打ち明けられないと、考える脳も停止してしまうから解決する方法も見つからない。最近では、“見えないもの”に対する恐怖を抱えている人も増えている。すぐには起こらない、これからのことに悩んでいるようだけど、世の中や人の人生なんて、何が起こるかわからないもの。

私が大好きな名画『風と共に去りぬ』の主人公スカーレットが、なかなか改められない自分のエゴを見つめ直すシーンで「こんなところで考えても仕方ない。タラに行ってから考えよう!」と言いながら立ち直ったセリフのように、実際に問題にぶつかった時に考えた方がいい。仕事も同じように「失敗したらどうしよう」と心配するのではなく、失敗した時に注意してくれる人に従えば何とかなるもの。

よく「頑張る!」と自分自身に活を入れたり、「頑張って!」と誰かを励ましたりするけれど、「頑張る」という言葉を辞書で引いてみると「自我を通す」「執念深い」とか、あまりよいイメージではない意味もあるんだよ。だから全く頑張らなくていい、適当でいいんだよ。

リトルディッパー 小林良男 富ヶ谷

“当たり前”のことではなく、考えることで気づく深い意味を大切に。

「万人に好かれる人はいない」の反対は、「万人に嫌われる人はいない」になる。みんな、後者の意味を信じた方がいい。信じるものがあったら発信すること、そうすれば誰かはわかってくれるから。

これらの言葉のように、“当たり前”になっている表面の意味しか見ない人が多いような気がする。でも、さまざまな状況に対して、一面だけではなく、いろんな角度から考えることで気づく深い意味を大切にして欲しい。

リトルディッパー 小林良男 富ヶ谷

ひとりのオヤジから「楽しい」が連鎖していく

――富ヶ谷という街に根を生やす古株のお店として、リトルディッパーとマスター小林さんの、これからとは?

私の役目は、お店に来てくれたみなさんが楽しい気持ちになって帰ってくれること。これは今までもこれからもずっと変わらない。お店の中で私が気楽に接すると、お客さんも気を遣わずリラックスして飲んでくれる。

私がルービックキューブや手品を覚えてお客さんに披露しているのも、目の前にいる人を驚かせたいという気持ちからではなく、技を見たお客さん自身がやりたくなって、誰かに勧めたくなるものだから。

そうやって「楽しい」と感じたことを他の誰かに共有して、ひとりのオヤジの楽しさがどんどん連鎖して広がって、少しでも世の中が楽しくなることを願っているよ。

リトルディッパー 小林良男 富ヶ谷

今までも、これからも、富ヶ谷のパワースポットに

初めての取材から約1年後、リトルディッパーを再訪したら、ルービックキューブや手品の技を身につけ、自分自身に挑戦しながらみんなを楽しませているマスター小林良男さんがいました。

取材を終える頃には、店内は若い男女や、女性ひとりのお客さんで大賑わい。寂しさや不安なんて一瞬にして吹き飛ばす“超ポジティブ・パワー”を吸収しにきているのかもしれません。

取材を終えお店を出るときに、マスターが好きな映画『風と共に去りぬ』の主人公スカーレットが苦境になる度につぶやく口癖「Tommorow is another day」をふと思い出しました。

その意味は「明日は、明日の風が吹く」ではなく、「明日は、アタシの風が吹く」のだと、マスターに背中を押され自己肯定感が高まっている自分に気付きました。

やっぱりここは、今までも、そしてこれからも、訪れた人たちの「運気が上がる」富ヶ谷の “パワースポット” ですよ!

リトルディッパー 小林良男 富ヶ谷

リトル・ディッパー
住所:東京都渋谷区富ケ谷1丁目6−7  1F
電話:03-3467-8285
営業時間:ランチタイム 12:00~16:00  / バータイム 19:00~翌01:30
定休日:日曜日

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