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配色の楽しみを提案する花屋「MUNSELL」のフラワーアーティスト・梅澤秀さんが手掛ける“絵画のような花束”。個性豊かな色彩の共鳴に魅せられて

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代々木上原のご近所、元代々木に昨秋移転オープンしたフラワーショップ「MUNSELL(マンセル)」。通りに面したガラス張りの外観から見える白い光と色とりどりの花。それは花屋というよりアートギャラリーのような佇まい。壁も天井も照明も全体的に無機質で、その白い空間に個性豊かな花々の色彩が印象的に映えている。並んでいる既成のブーケも彩り豊かで、多色使いながらそれがセンスよくまとまっていて美しい。言うならば“絵画のような花束”。この作り手こそが、同店のオーナーでフラワーアーティストの梅澤秀さんだ。

同じものはない、個性豊かな花の“色”に魅せられて。

梅澤さんと花の運命的な出会いは美術系大学在学中の19歳のとき。実習の中でひたすら花の絵を描くうちに作品の対象物としてではなく、ひとつとして同じものはない“花”という存在に次第に魅せられていく。種類の多様さや予想外の色合いも興味深く、気づけば花のトリコになっていたそう。その後、教員からのアドバイスもあり華道家の道へ。「とある流派の家元(その流派のトップの人)の補佐役を務めたのが自分にとって初めての花の仕事でした」と梅澤さん。

左右の壁一面に彩り豊かな花が並ぶ「MUNSELL」の店内。それぞれの美しさにハッとさせられる。

生け花に向き合うこと数年。自身の考えの軸となっている“アートと花”について模索する中で、純粋に花そのものについてもっと詳しくなりたいという思いが沸き、華道家から花屋に転身。

「華道家として花と触れ合う日々を送っていたけれど、花屋としては初心者も同然。その一連の仕事を知るためにいくつかのフラワーショップでアルバイトとして働きました。大変なこともあったけれど、“キレイね!素敵ね!”と花に歓喜する人々の様子を間近で見られることが僕にとって至福で、嬉しかった。そんな感情が沸くたびに、ああ、やっぱり花屋の道に進もう、自分の店を開こうという決意が固まって行きましたね」(MUNSELL 梅澤秀さん、以下同)

プレイフルな配色が得意な花屋「MUNSELL」

花屋での実務経験を積み、2018年に自身の店「MUNSELL」をスタート。

梅澤さんが「MUNSELL」で扱うのは大多数が“色”の花。白い花の仕入れは少なめで、いわゆる葉物や観葉植物といったグリーンの類も基本的には扱わず、空間もブーケも色の花をメインで構成するスタイルが特徴的。

「自分にとって“白”という色は光や透明に近い認識。すべてというわけではないですが、お任せのオーダーやご予約いただいたお花は基本的に色の花のみで構成しています。白い花も素敵だけれど、MUNSELLではあえて多くは扱わない。ある意味で別枠的な白という色、うちではカラフルな花を咲かせるキャンバス的なイメージで、店舗の壁や照明に採用しています。とは言え、こういったこだわりはMUNSELLを個性的な花屋として演出するために考えたコンセプトというわけでもなくて。純粋に子どもの頃から色が好きで、絵を描いたり工作したりと色にまつわる遊びが日課でした。多分今でも配色へのこだわりは強い方。そんな自分が思う、花とアートのシームレスな落とし込みがこの表現やコンセプトに現れているのかなと思います」

ブーケやアレンジメントは、花で絵を描くような行為だと言う梅澤さん。いわゆる色の花だけで構成するスタイルに加えてラッピングも色紙。予想を少し裏切る色の組み合わせは、まさに“色を楽しみ、配色を探求し続ける”姿勢そのものだ。

贈り主を想像しながら“花で描く”

花は1輪400円程度〜、単品購入も可能。

「MUNSELL」をスタートして7年。その存在が知れ渡った今、今回も梅澤さんのセンスにお任せします!というお客さんが大多数。けれども梅澤さんのブーケ作りのモットーは変わらず「90%はお客様の好み、10%に自分の提案を」というスタンスを貫く。

たった10%、だけどその10%に差がつく美学が詰まっている。なお、「MUNSELL」では、アレンジメントのオーダーを受ける際に色味を問わないことがスタンダード。その花の用途や贈る相手についてヒアリングしながらイメージを構成し、それを花で表現する。「もちろん、オレンジ色の花を入れて、と言われれば入れますが、そのときには例えば紫色の花も一緒に添えるとか何かしらの一捻りを加えると思います。いい意味で予想外な提案をしたいから。すべての仕事において、オーダーごとの一期一会な花とその配色を楽しんでいただけたらと思っています」と梅澤さんは言う。

花とアート、その2つを心から愛する彼ならではの信念にファンがつくのも納得だ。

梅澤さんの花鋏。生け花時代からこのタイプのものを愛用。「鉄はさみは切れ味が良くて防腐効果も期待できます。これ自体は半年前から使っている物だけど、毎日すごく使うのですでに年季を感じる見た目に」

「1000本の花を使う大作も素晴らしいが、目の前の人に1本の花を届けることも尊い」

「MUNSELL」のオーナーでありながら、現在もミュージックビデオやCM等の撮影の装花やウェディング関連の現場仕事なども手掛けている梅澤さん。それでも実際に店頭に立っていち花屋として接客をすることは何よりも大事にしている仕事なのだそう。

「撮影現場でセットを作ったり、パブリックなシチュエーションでのデコレーション依頼もありがたくて貴重で、僕にとって大切な仕事には変わりないけれど、やっぱり目の前で花を受け取ってもらってお客さんが喜ぶ顔を見ることが好きだし、たった1本の花でも人に幸せを届けられると思うから。リアルな世界で人に花を届けられる花屋のフローリストでありたいんです」

主に月曜・金曜、土日のどちらかは梅澤さんも「MUNSELL」店頭に立っているとのことなので、梅澤さんに花を仕立ててもらいたい人は、このタイミングに足を運んで。

花の選定やアレンジスタイル以外にも、さりげなく「MUNSELL」の美学を感じるのが梅澤さんをはじめとするスタッフの装い。

「制服というか、店頭スタッフのドレスコードを設けていて、それがジャケット着用なんです。夏場は襟付きのシャツがマスト。たかが身なり、だけどされど身なりです。身だしなみや装いを整えることで気持ちも整います。それに、決して安くない花です。お金を払ってとっておきの花を買っていただくのだから、僕らスタッフもおもてなしの心を大事にしたい。そんな思いから店頭スタイルを決めました」各々のスタイルをベースとしつつも、どこかきちんと感のあるオシャレな佇まいが素敵だ。

梅澤さんが取材日に着ていたオシャレなセットアップは友人が手掛けた一点物の一張羅。

当初から出店地の候補だったという代々木上原エリア。実際にお店を構えてみて感じたことを聞いてみると「年代問わず感度の高い方々が多いことと、何かを選ぶ際に自分が素敵だと思うことや自分の直感に真素直な人が多いことかな。一見花屋っぽくない外観も相まって、なんだろう?と見てくれる人も多いです」と教えてくれた梅澤さん。

以前より年配のお客さんも増えたそうで、“本当に美しい! このお花をいただけますか?”というような嬉しい言葉をもらうこともしばしばなのだとか。

ちなみに、梅澤さんの上原〜富ヶ谷エリアのお気に入りスポットは、カフェ&バーの「nephew」。まだあまりショップや飲食店も行けてなくて、これから徐々に開拓していきたいとのこと。

“花を見るたびに花が好きになる”きっかけを原宿から

「覗くだけでもOK、気軽に立ち寄ってください」と梅澤さん

この「MUNSELL」のほかにもう一店舗、姉妹ブランドとして展開する「PLAY(プレイ)」というフラワーショップが東京・原宿にある。こちらはカワイイをテーマに、ポップで買いやすい花を提供。原宿という場所もあり、ファッションの一部として花を楽しんでもらったり、ストリートで映えるようなショッパーやパッケージングにこだわってデザイン。

「MUNSELLを花の個性や魅力をしっかりと深く伝える店と位置付けるならば、PLAYはもっとカジュアルでヤングな趣き。花って可愛いじゃん、きれいじゃん、いいじゃん!って思ってもらえる人が一人でも増えたらいいなと思ってブランディングしました。SNSでも反響があるみたいで、嬉しいですね」

今後の展望としては、「MUNSELL」と「PLAY」を大事にしながら、もう1店舗花屋をオープンすることを目指しているという梅澤さん。「個人としては、私的なアート制作にも力を入れつつ、それがある程度そろったら個展の開催も視野に入れています」となんとも興味深い回答も。「それは生け花や花を使ったインスタレーションといったことではなく、あえて花を使わずに別の素材や仕事とは異なるアプローチで大好きな花を表現できたら」とのこと。花屋としての活動だけでなく、彼のパーソナルワークを拝見できる日も待ち遠しい。

元代々木の「MUNSELL」で個性豊かな色彩の共鳴に魅せられて、梅澤さんの“花とアート”の模索は続いている。

MUNSELL

【住所】東京都渋谷区元代々木町5-2

【営業時間】11:00〜19:00(金土曜 〜20:00)

【定休日】木曜

【電話】03-6712-2345

【WEB】 HP / Instagram


ALL PHOTOS:SHO KATOH

 

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