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「消費」ではない、アートの在り方とは? 代々木上原における3つのケーススタディ

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CASE STUDY3:Tiktokのバズとは対極にあるアートフィルムが、グローバルメディアへ掲載

3つ目の事例は、昨年7月に公開されたアートフィルム「Atrophied」。
代々木上原のクリエイターズスタジオ「OPRCT」を舞台に全編16mmフィルムで撮影された映像作品で、撮影場所もクリエイターも代々木上原ローカルでの繋がりを活かしたものながらLVMHが手掛けるグローバルプラットフォーム「NOWNESS ASIA※」へ掲載される、という事象が起きました。

※NOWNESS ASIA:アートとカルチャーの最高峰を紹介するグローバルプラットフォーム。あらゆる分野のインスピレーションの源として、世界各国のクリエイター・アーティストに影響を与えている。

 

『Atrophied -OPRCT version-』 まずはこちらからどうぞ!

さらにショートバージョン(OPRCT version)では NYの最前線で活躍するキーボーディストBIG YUKI氏が音楽を手掛けています。
まずは前提や先入観を抜きに、再生してみてください。

>「Atrophied」の概要は、コチラ

0から完成に至るまで、転がるように生まれた映像作品

アートフィルム、というカテゴリー自体が、あまり聞き馴染みがないものかもしれません。
映画やドラマ、ドキュメンタリー、CMなどのようにストーリーやメッセージが明示されず、一見すると「わかりにくさ」があります。
映像というリッチなメディアでありながら、解釈や受け取るものは「観る側」に委ねられている。その余白の大きさが、アートフィルムの最大の特徴といえます。

ローカル発で、グローバルへ響く作品がどのように生まれたのか。
OPRCTの運営サイドとして制作に携わったスタッフに話を伺いました。

 

―今回こちらのアートフィルムは、どのような経緯で制作されたのでしょうか?

もともとは、OPRCTが「受動的な単なる撮影場所ではなく発信型のクリエイターズスタジオであること」を映像として表現しよう、というところからプロジェクトがスタートしました。
またそれらを作り上げる上で、出来る限りクリエイションを代々木上原で完結させることを目指し、代々木上原を拠点に活動されている映像作家のtakachrome(タカクローム)さんに指揮をとっていただきました。撮影場所はOPRCTを中心に、数百メートル圏内で行っています。

―施設や企業のプロモーションを映像で行う場合は、いわゆるCMであったり「わかりやすさ」が最重要視されるような印象ですが、なぜ「アートフィルム」としてのアウトプットに行き着いたのでしょうか?

当初はよりプロモーションチックなものも想定していたのですが、takachromeさんに指揮をとっていただくことを決めて打ち合わせを進めていくなかで、原点に立ち返りました。

OPRCTが目指しているのは「クリエイターやアーティストが存分に活躍できるエコシステムの一環になる」こと。すでに世の中にあるプロモーション手法をなぞるのではなく、この作品自体がクリエイターやアーティストの先進性を示すものに振り切ろう!と。
そのために、施設を使用して制作すること以外に作品の制限を設けず、クリエイターのひとつの作品として世に出ていくことを最優先に、創作の場を提供することにしました。


撮影現場風景

「わからなさ」がどこへ、どこまで届くか。余白のある映像がもたらす、景色の先。

―当初からものすごく計算した、というよりは、偶発性や作家性を大切にしたところがあるのでしょうか。

そうですね。撮影現場でも「私たちは何をつくっているのか」を言語化しすぎず、物語を演者の身体性に委ねたこと、全編を16mmフィルムで撮ることによる緊張感もあってか、異様な熱気と純度に包まれていることが印象深かったです。

完成したあとも、この作品が何なのか、というのは関わったスタッフたちでもあえて断定していないところがあります。

「NOWNESS ASIA」に掲載いただいたことで、先進性や作品としての純度の高さは評価をいただいたのかなと思いますが、これから先どのように広がっていくのかは、私たち自身が予測できていないし楽しみな部分でもあります。

―はじめて観たときに、いわゆるSNSでのバズとは別軸というか、対極にあるような作品だというのを強く感じました。広まり方や、この映像自体がどのような現象を起こすのか、解釈の多様性も興味深いです。

そうですね。そういった意味で、バズとは違った広まり方、届き方やコミュニケーションのきっかけになればと思います。音楽・映像などの作品において、再生回数やいいね数で評価が可視化され、人気をはかるようになった近年のデジタル社会ですが、この企画で私達が改めて感じたことは、可視化された数値だけでは見えない、ひとつの芸術作品がひとりの人生を変えてしまうような、そんな力を持っていること。
誰かに深く届く、残る、その作品の影響による「深度」はデジタルではまだはかられておらず、そういう側面を忘れないようにしなければいけないということを最後にお伝えしておきたいと思います。
観るデバイスや環境でも感じ方が異なりそうなので「これで観るとどうだった」などと、感想はどのようなものでもお寄せいただけると嬉しいです。

<参考リンク>

OPRCT 

Atrophied -OPRCT version- 

takachrome 

 

あとがき:自分で考え、街にも出よう。

3つの事例に共通しているのは「行為や関係性が先にある」ことと「アート作品自体から直接的な対価を得ない」こと。ヨンボさんの例からは一人の熱量が生む力とアートフォーマットとしてのレコードの秀逸さ、ファイヤーキングカフェの例からは飲食店におけるアート(ギャラリー)の理想形、OPRCTの例からは”数値化されない”音楽・映像表現の可能性が学びとれました。

具体的な事例から法則や学びを得る、ローカルケーススタディ。具体的な事例は日頃の取材で集まっていますが、テーマを設けて具体と抽象を行き来するとまた一段と学びが深まりました。今回はアートを主軸にお届けしましたが、代々木上原は各分野でユニークな人やお店が存在していますので、また別のトピックでお届けできるかもしれません。次回乞うご期待!です。

 

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