84年続く、町のお豆腐屋さん。手作りの豆腐だからできること。
「あのお店の『アレ』」があるから、代々木上原に行きたい、暮らしたい!と思える名物をピンポイントでご紹介する連載企画第三弾。
第一回目で取材させていただいた「按田餃子」関根さんからのオススメで、今回は「太田屋豆腐店」の「木綿豆腐」をご紹介します。
まずは関根さんからのコメントをどうぞ!
「太田屋豆腐店は、80年以上続く、昔ながらの町のお豆腐屋さん。按田餃子の麻婆豆腐は、ここの木綿豆腐を使わせてもらっています。買い出しにいくと、常連さんが軒先で豆乳を飲みながら会話をしている光景に出会えたり、ポイントを貯めると箱ティッシュがもらえたり、アナログな交流も楽しいお店です」ー按田餃子 スタッフ 関根さん(写真中央)
老舗の豆腐さん…と緊張しながらも取材の申込みをしたところ「おおー!按田餃子さんから!」と気さくに受け入れてくださったのが、「太田屋豆腐店」3代目の酒井毅さん。まずは「按田餃子」さんとの関わりから、お話を伺いました。
まちのレストランも、学校の給食も、「太田屋豆腐店」
ー今回、「按田餃子」さんからのおすすめということで伺わせていただきました
「いやぁ、ありがたいですね。按田餃子さんがオープンして少し経ってからかな?オーナーの按田さんが直接来られて、うちの豆腐を使いたいということで、それからずっと使ってくださっています」
ー上原でお店をやる以上、豆腐は「太田屋豆腐店」じゃないと!というところは多そうですね
「ご近所で古くからお付き合いさせていただいているところもあれば、渋谷区内でうちのお豆腐を使ってくださる飲食店もあります。上原だと、学校の給食でも使っていただいてます」
ーその学校、子どもがいたらぜひ入学させたいです。お豆腐づくりにおける、こだわっているポイントを教えてください
「自分がおいしいと思える豆腐をつくることです。あくまで町のお豆腐屋さんなので、毎日買える金額で、出来る限りおいしいお豆腐を、その日に売り切れる分だけ見極めてつくることでしょうか」
手作りだからこそできる、やわらかい触感の木綿豆腐
ー今回、「太田屋豆腐店」の木綿豆腐は一味ちがうぞ!という前情報を入手しまして、その特徴を教えてください
「うちの木綿豆腐は、通常の木綿豆腐よりも、やわらかく仕上げているのが特徴です。通常、冷奴などそのまま食べるのが絹ごし、煮込み料理などで木綿、という使い分けをするかと思いますが、うちの木綿はそのままでも煮込みでも、どちらでもおいしい触感になっています」
ーなぜ、そのような木綿豆腐に仕上げているのでしょうか?
「それが、先代のときからこのやわらかさで、理由は聞いたことがないんですよ。先代なりのこだわりがあったと思うので、意思を受け継いで、同じようなやわらかさでつくっています」
ーここにきて初歩的な質問で恐縮なのですが、手作りの豆腐とスーパーで買うようなお豆腐の違いは、どのようなところにあるのでしょうか?
「豆腐は生もので、その日に売る分はその日にしかつくらないので新鮮であること、あとは目と手の届く範囲でつくられているので、調整がきくことですかね。毎朝7時くらいから豆腐をつくっているので、よかったら覗いていかれますか?」
ーおお!ぜひお願いします!
〜翌朝7時〜
<豆腐が出来るまで>
というわけで、知っているようであまり見たことがない、豆腐づくりの現場にお邪魔しました!昔ながらの、豆腐が出来るまでの流れを駆け足でご紹介します。
①こちらが原料の大豆→②前日に、次の日つくる分に必要な大豆を一晩水に漬け込みます。翌日に売り切るだけの量をここで見極める必要があり、経験と勘が必要なポイント→③水とあわせて、大豆を粉砕します→④水と大豆が混ざった汁(生呉)を窯でグツグツ煮込みます。太田屋豆腐店は昔ながらの、地釜で煮込むスタイル
⑤煮込んだ生呉を吸い上げて→⑥⑦こし布を通し、絞りこむことで豆乳(絞り汁)とおからを分離させます→⑧豆腐箱に豆乳とにがりを加え、固まると完成!
※お豆腐屋さんごとに、使用している機材もそれぞれなので、方法や流れも若干異なるそう。あくまでこれは「太田屋豆腐店」のやり方ということでご了承下さい。
仕込みの段階で、気温・湿度に応じて水の量は変わり、また、煮込む時間なども明確な時間はなく、見た目や音で判断するそうです。鍋の前に佇む酒井さんのまなざしはまさしく料理人。絶妙なやわらかさの木綿豆腐も、経験を積み重ねた目と手による賜物というわけです。
<他にも見どころがいっぱい!ここがすごいぞ「太田屋豆腐店」>
店頭に並ぶ、自家製のお惣菜。お豆腐屋さんの母がつくる家庭料理をお惣菜として販売しはじめたことをきっかけに季節ごとにさまざまなおかずが並ぶようになったそう。
木綿豆腐をつくる段階で、水分を抜ききらずにやわらかい状態のままにした「おぼろ豆腐」。やわらかい触感と、大豆本来の甘さがほんのり残っているのが特徴。酒井さん曰く「あえて麻婆豆腐に使ってみるとおいしいですよ!」とのこと。
「太田屋豆腐店」を訪れたらぜひ味わいたいのが、「朝のしぼりたて濃厚豆乳」。
「通常の豆乳は濃度がだいたい4~6%なのですが、うちのだとだいたい12~3%くらいあります。好みは人それぞれですが、大豆本来の味に慣れ親しんでもらえれるとうれしいです」by酒井さん
お惣菜でのいちばんの売れ筋は、お店で揚げる卯の花コロッケ。一日平均4~50個は売れるそうです。
最後に:「太田屋豆腐店」が続く理由と、代々木上原で買い物をすることの意味
多いときには上原界隈だけでも5〜6軒あった「町の豆腐屋さん」。いまでは、渋谷区全体でも、「太田屋豆腐店」を含めて、残っているのは5〜6軒なのだそう。
そのような中、なぜ「太田屋豆腐店」は、80年以上も続いているのでしょうか? その答えは「酒井さんが跡を継いだから」なのですが、一度は一般企業に就職した後、脱サラしてお店を継いだ理由を酒井さんはこういいます。
「小さいころからこの環境をみてきて、この文化を、お店を残していきたいな、と思ったのはもちろんなのですが、商売が全く成り立たない状況だったら継ぐのは難しかったとおもいます。地域の方々とのつながりや信頼関係を含め、先代が「愛される豆腐屋さん」をつくってくれたから、継ぐことができたし、続けることができていると思います」
また、お店が長く続いているのは、上原という土地柄も大きいと酒井さんはいいます。
「上原は、昔ながらの人のつながりが生きている町。長く続いているお店も多くて、お店そのものが「買い物をするだけの場所」ではないことがほとんどです。コアな情報は、立ち話などで人を通じて巡っているので、この上原銀座、駅前、仲通りと商店街をフル活用してもらえると、上原での暮らしはより楽しいものになると思いますよ」
余談ですが:「ポイントを貯めると箱ティッシュプレゼント」の件について
按田餃子・関根さんがおっしゃっていた「ポイントを貯めた人の中から抽選で箱ティッシュプレゼント」の件。長年の試行錯誤の末、「食材だと賞味期限とかあるし、どの家庭でもなんだかんだ使うのは箱ティッシュ」ということでここ数年は箱ティッシュに落ち着いたそうですよ!
太田屋豆腐店
【住所】東京都渋谷区上原1-22-5
【営業時間】7:00~19:00
【定休日】日曜祭日
【TEL】 03-3467-2365
【関連リンク】facebookページ
RELATED
関連記事