代々木上原の暮らしに新たな出会いを生む、名物ギャラリー
「あのお店の『アレ』」があるから、代々木上原に行きたい、暮らしたい!と思える名物をピンポイントでご紹介する連載企画第二弾。
今回は、代々木上原を代表する名店「ファイヤーキングカフェ」の「ギャラリー」について掘り下げていきます。
店名にもなっているヴィンテージの食器類、こだわりの詰まった内装やインテリア、深夜2:00まで通し営業というホスピタリティなどなど特筆すべきポイントは多々ありますが、開店から17年間続く壁面の「ギャラリー」は、「ファイヤーキングカフェ」を語る上で外せないポイント。
カフェに併設してある、というよりも、壁面は作品が映えるよう照明や余白が設けられ、作品を展示するための設備は万全。アーティストからも、展示の希望依頼が絶えない人気ギャラリーなのです。
今回、ギャラリーについて教えてくれたのは、「ファイヤーキングカフェ」オーナーの阿部さん。ギャラリーを併設している理由や、お店をつくる上で意識したこと、代々木上原の街のことも教えていただきました。
天井の高さに惹かれて、1/3のスペースからはじまった「ファイヤーキングカフェ」
「代々木上原にはそれまでに10年ほど暮らしていて、いつかお店をやれたらなと漠然と考えていたんです。ここには以前、シチュー屋さんが入っていて、天井が高く、ここだと良いお店にできそうだと思っていました。偶然、とある晩にそのお店で飲んでたら、店主の方からもうじきたたむという話があって。物件を引き継ぐ形で、現在の3分の1のスペースで開業したのが、いちばんはじめの頃。その後立て続けに両隣の物件があいて、2年後には3軒をつなぐ形でいまの広さになりました。いま考えると、物件に注目するきっかけになった天井の高さは、ギャラリーをやる上でもプラスになりましたね」
クリエイターの多い代々木上原に呼応し、ギャラリーが誕生
「作品を展示するようになったのは、お店をオープンして、およそ半年が経った頃です。最初は手持ちの写真を飾っていたのですが、次第に代々木上原にはクリエイターやアーティストの方が多く暮らしていることがわかってきて。作品を見せてもらったりするうちに、自然な流れで壁面をギャラリーとして活用することになりました。写真家の秋田大輔さんの展示を皮切りに、当初は3ヶ月ごとに内容を変えて、その半年後にはいまのペースでギャラリーとして機能しはじめました」
展示内容の選定基準は、いい空間をつくる作品かどうか
「ギャラリーをスタートしてからは、有名無名問わず、ジャンルも写真から絵画、イラスト、書など多種多様な展示を行ってきました。展示内容の選定基準は、壁面に飾られることで、素敵な空間を演出できるものかどうか。ギャラリーを併設している最大の理由は、”空間づくりの一部をアーティストに委ねる”ためなんです。展示内容が変わることで従業員も訪れる人にとっても常に新鮮な空間になります」
生活の一部に、アートがあること。ギャラリーがもたらしてくれるもの
「ギャラリーをやる理由は他にもあって、やっぱり普通のギャラリーだと、よっぽど興味のある人しか足を運ばないですよね。ここだとあくまで生活の一部として、飲み食いしながら作品に触れることができる。それから、展示を3週間〜1ヶ月やっていると、その間にアーティストの友達だとか、身内の方も来てくれるんです。普段は代々木上原に来ないような人が来るきっかけになって、例えば100人きたら、そのうち5人だか10人だかは店自体を気に入ってくれて。顧客になってくれる。そのチャンスが毎月あるのは、営業的にも大きなプラスになっています」
カフェとギャラリーが共存するために必要なこと
「日々の暮らしに近い形で作品に出会えることや、代々木上原という土地柄も相まって、作品が完売する展示も少なくありません。作品をみせるための工夫としては、照明は徐々にアップデートを加えていて、今は美術館でも使われるような展示用のLEDスポットライトを使っています。あとはやっぱり天井が高いことが大きなポイントですね」
と、ここまでギャラリーについていろいろと教えていただきましたが、代々木上原で17年間、街の中でも計り知れない役割を果たしてきているカフェをつくりあげた阿部さん。他にもお話のなかで印象的だった、代々木上原のまちのこと、お店に関する言葉をお届けします。
代々木上原は、東京でいちばんおもしろいひとが集まるまち
「代々木上原でお店をやっていてよかったな、と思うのは、何よりも人に恵まれていることです。若い人から、ご年配まで、具体的に誰々、といえばキリがないですが、東京で最もおもしろい人が集う街だと思います。17年間、直に街の人々と接してきて、ずっと変わらずそう思います。しっかりと稼いでいる方が多いので、他人に干渉しないし、適度な距離感も心地良いです。お店をずっとやっていても、トラブルも一切ないですよ」
代々木上原のまち全体がホテルだとしたら、「ファイヤーキングカフェ」はロビーのような場所
「オープン以降、メニューの料金と営業時間はずっと変わっていません。当初から目指しているのは、代々木上原自体がひとつのホテルだとしたら、そこのロビーのような場所です。でしゃばりすぎず、ふつうに、お茶だけでもいいし、お酒ものめて、食事もできるところ。だから僕らはいつも身ぎれいにして、まちの人たちとも、長い付き合いができるのが理想。あくまでも主役は、ここに集う街の人々やお客さんたち。それぐらいのスタンスでいいんじゃないかって思ってるんです」
その他、ギャラリーにまつわる気になることを〈ファイヤーキングカフェ〉マネージャーの北畠さんに伺いました。1問1答形式でお届けします。
Q.ギャラリーとして展示させてもらう場合、使用料はかかるのですか?
使用料はいただいていないんですよ。その代わり、選ばせていただいているというか、オーナーの阿部によるセレクトが基準になっていますね。
Q.展示の予定はどのくらい先まで決まっていますか?
今だと来年の半分ごろまでは既に決まっていますね。
Q.作品がいちばん良く見える、オススメの席はありますか?
どの席からでもそれぞれの作品が良くみえるのですが、近くの作品も遠くの作品もバランスよく見えるのは、壁側のソファ席でしょうか。
Q.これまでの作家さんで、北畠さんが個人的に最も感銘を受けた方はいますか?
波の写真を撮っている、杏橋幹彦さんです。海にもぐって、大きい波に巻き込まれながら水面から崩れる波を撮ったりしていて。毎年定期的に展示を出していただいているのですが、最初見た時は衝撃でした。
Q.現在行っている展示内容は、どんな作品なのでしょう?
写真家・馬場道浩さんによる熊本城をテーマにした写真展ですね。現在は復旧のためにシートで覆われているのですが、その前に撮影したものなのだそうです。復興支援の意味合いもあり、展示販売は行っていない、やや特殊な形の展示になりますね。
(〜10/15まで)
<その他の見どころや、店内の様子>
ファイヤーキングカフェ
【住所】〒151-0064 東京都渋谷区上原1-30-9
【営業時間】平日 AM11:00-AM3:00 土日 AM12:00-AM3:00
【TEL】03-3469-7911
【WEB】Instagram
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