代々木上原の屋上からこんにちは!
僕たちACT LOCALLY YOYOGIUEHARAの運営母体、LIFESOUND, INC.が新しいカルチャーの拠点となるビルをつくりました。
>>OPRCT(オプレクト)
新宿、副都心を一望できるルーフトップ。
OPRCT 公式サイトより @BAUHOUSNEO
正確には、単なるビルというのではなく「クリエイターズスタジオ」でして、撮影スタジオ、イベントスペース、ライブスペースを備えた文化的複合施設です。
まだ一部工事中なのですが、いよいよお披露目の日取りが来年1月に決まり、情報解禁もスタート!ということで、どんな施設なのか、ここで何が起きていくのか、ACT LOCALLYな目線で数回に分けて綴っていきます。
今回はその第一弾ということで、施設内部を実際に見ていきつつOPRCTをたちあげるにあたって何を考えたのかなど、代表である山内と僕たちACT LOCALLYの対談形式にてお届けします。
<Profile>
山内直己(やまのうち・なおき)/ LIFESOUND, INC.代表取締役。ソウルミュージックを中心とした音楽レーベル「SWEET SOUL RECORDS」や 代々木上原のスタジオ「Studio TERRANOVA 」を運営。
人生を変えた、とある日のスティーヴィー・ワンダー。
ーバタバタのなか、ありがとうございます。
いえいえ、こちらこそ!
ービル、できましたね。
できましたね。
ーすごいっすね。
やばいっすよね。
ーつくってるよーどんどんできてるよーときいていましたが、いざできると、すごいっすね。
ほんと、そわそわしてますよ。
飲食スペースを含む5つのフロアから構成され、各部屋が複数の機能を持っている。>>OPRCTの施設詳細はコチラ
ーまずは、ビルを建てたいぞ、となった原点のお話をききたくて。
そうですね。考え始めてたのが大学生の頃からだったので、構想15年ぐらい、ですかね。レジュメか資料かなにかに、イメージ図みたいなのを描いていた記憶があります。
ーおおお
その頃から音楽に傾倒していて、自分が志した音楽で活躍すべきアーティストの活躍できるマーケットをひろげていくために、ソウルミュージックのレーベルをつくることを目指していたんです。そのなかのひとつの構想としてレーベルの拠点をつくれたらいいなぁって。1Fは飲食で、2Fはリハーサルスタジオ、3Fはレコーディングスタジオ、4Fが事務所で、地下はヴェニュー。落書きみたいなものですけど、そんな絵を描いてました。
ーもともと、音楽にガーッと傾倒していったきっかけは何だったのでしょうか?
高校生のころに、スティーヴィー・ワンダーを聴いたのがきっかけです。もともとスポーツをやっていたのですが、怪我をしてやめて、幼少期からずっと興味があった音楽をやろう!と思ったタイミングで、たまたまスティーヴィー・ワンダーを聴いてボロボロと涙がでてきて。これは音楽やるしかない!って。
ーちなみにどの曲ですか?
「All I Do」です。アルバム『Hotter Than July』に入っています。
ーきっかけは、スティーヴィー・ワンダーの「All I Do」。
そう考えると、このビルのいちばんはじめのルーツは…
ースティーヴィー・ワンダー!
に、なりますね(笑)。でもそういうとかっこ良すぎるかな…
ーいやぁ、いい話です。ちなみに「All I Do」はどのようなシチュエーションで聴いたのですか?
友だちのDJイベントにいったときに、その曲がかかったんです。雷に打たれたような衝撃を受けました。
ー高校生でDJイベント…?
あ、高校はカナダのモントリオールってところに留学してたんです。
ーさすがにそれはお洒落すぎますね。
ちょっと字面的にキラキラしちゃってますかね。
屋上からは、井の頭通りや、ジャーミィもよく見える
ービルはじめるよ、って事実がすでにかっこいいというかアゲアゲな感じなので、中和するような小ダサいぐらいの話をいただけると…
それでいうと音楽に目覚めてバンドをやったりしたんですけど、プレーヤーとしてのセンスはまったくなかったですね。
ーおお
まったくダメでした。
ーありがとうございます!
プロになろう、みたいな発想はまったく生まれなかったですね。
音楽の師匠が、音楽をやめた。
ー音楽の嗜好はスティービーワンダーからはじまり、他にもどんどん広がっていった形ですか?
そうですね。1990年代後半から2000年代あたまにかけての時期で、ディアンジェロとか、エリカ・バドゥ、ジル・スコットとか、いわばネオソウルと呼ばれるジャンルですね。そっちに傾いていきました。
大学ではこっちに戻ってきて、はじめは下北沢に住んでたんです。たまたまいとこに連れていってもらって知った「リトルソウルカフェ」ってお店が最高で。レコードが1万枚ぐらいあって、いつもいい音楽がかかってるんです。音楽の勉強だ!つって週2~3回は入り浸ってました。
階段もフォトジェニック。
ーそこから、レーベルを持とう!なんならビルも建てたい!というのは大学時代にすでに構想していたわけですもんね?
はい。レーベルをつくるいちばんのきっかけになったのは、音楽の師匠がいたんですけど、彼があるとき急に音楽をやめちゃったんですよ。
日本では数少ない、ソウルミュージックのプロドラマーで、凄腕でした。その方にドラムを習っていて、アシスタントとしていろいろ現場も連れていってもらって。
降りていきます
ただ2000年代のはじめごろって、ちょうど音楽が傾き始めたころで、どんどん、ソウルミュージックの仕事がなくなっていったんです。そこで師匠はスパッとドラムをやめちゃって。けっこうそれが衝撃的で。
こんなに才能があって腕のたつ人が、なぜ音楽を辞めざるを得ない状況になるんだろう?と考え始めて、学んでいくうちに、マーケットそのものがないんだなということに気づいて。
僕が好きになった音楽に関しては、日本国内にはマーケットがない。その状況を変えるために、レーベルをつくろうと。
ーそれが、SWEET SOUL RECORDSですね。
そうです。あと、ビルの構想につながる話でいくと、ブルーノート(Blue Note Tokyo)の存在も大きかったです。運良く学生のときに行ける機会があって、こういう場所がつくれたらいいなって。
ーやはり、ブルーノートはすごいですか。
東京のブルーノートって、世界最高峰のヴェニューなんです。アーティストへのケアや、サウンド、雰囲気、食事、スタッフの方、すべてにおいてトップです。ただそこに来ているアーティストたちは氷山の一角で、面白いアーティストはまだ世界にたくさんいるんですよ。
屋上のひとつ下の階は、インダストリアル&ミニマルなスペース。撮影スタジオのほか、メイクスペース、バルコニー、トイレやシャワールームなども備えておりロケ撮影の控え室等にも良い。
その下は、キッチンやバスルーム、ウッドデッキバルコニーを備えたスペース。
どのフロアも、天井が高い。
ーそのアーティストたちが日本に来れない理由は?
日本に来るのはある程度成功してからできることなんですよね。どのジャンルでも一緒ですけど、いわゆる世界のメジャーレーベルとサインしてない、インディペンデントで活動している、ものすごいアーティストって世界各地にいるんです。地元では人気でも、日本に来るというハードルはいろいろあって、渡航費をだしてまで、なかなか日本にはこれない。
レーベルを立ち上げて10年間、Nao Yoshiokaの制作でNYやアムステルダムなど各地をまわっていると、行くたびにすごいミュージシャンに出会います。その土地のアンダーグラウンドのジャムセッションや、ローカルの気鋭のバンド。その多くが日本にはきたことがないんです。
地下3階は約200人を収容可能なライブスペース兼撮影スタジオ。
取材日には、音響システムを組み込む工事を行っていました。
代々木上原と、世界がつながる。
ーここのビルでは、そういった「日本にはなかなか来ないようなめちゃすごい」方々のライブを定期的に行っていくと。
そうですね。
ーすごく楽しみです。
僕たちの念願というか、アーティストが活躍する装置だったりプラットフォーム、生態系をつくることがもともとの目標で。Spotifyのようなサブスクリプションサービスで音楽がどんどん手軽になってきていますが、その分ライブの価値、リアルの空間で繰り広げられるものが絶対に負けないし残り続けるだろうなというのはずっと前から思っていたことで。ライブができる空間は絶対につくりたかったんです。
スピーカーは、Made in USAのMeyer Sound。ものすごく音がいい。
メジャーレーベルともサインしていなくて、完成されて物事に慣れた状態ではないけど、インディペンデントで、俺らここでぶちかましてやる、みたいな本気のやつらのステージをぜひみてほしいです。
ー具体的に今パッと思い浮かぶ、このアーティストはぜひ呼びたい!と考えている人はいますか?
有名どころでいえばジャズミン・サリヴァンとか、玄人な感じだったらタンク・アンド・バンガス、ニューヨークだったらYEBBAとかですかね。
スピーカーの音、聴いてみます?ということで音をかけてくれたとたん、まるで別の空間になったかのような豊かな音の塊が室内を満たし、何これ…一生ここで音楽聴いていたいんですケド…!?という気持ちになった。
うちのレーベルのアーティストであれば、キリアム・シェイクスピアっていうフィラデルフィアのコレクティブ。
話は若干変わりますが、ニューヨークで見た衝撃的なライブといえば、こけら落としのイベント第一弾のBIGYUKIさん。
以前から僕が仲がいい現地のミュージシャンたちから「YUKIはやばい」といつも聞いていて、今年のグラミー賞を見に行ったときにたまたまニューヨークでリリースパーティをしていて。。
>>イベント情報:NYで最も注目されるキーボーディスト・BIGYUKIとKendrick Lamarとのコラボで話題を集めたAnna Wiseが共演
>>OPRCTでのこけら落としライブは2019年1月19日に開催!予約などの詳細はこちらから
ーやっぱり、ライブっていいですよね。サブスクが普及すればするほど、みんな生や現場の価値を再認識しつつあるような気がします。
音源として聴けるものはほんとに氷山の一角ですからね。海外のアーティストは特にライブでは全然ちがうことをやりますから。
ソウルミュージックは特に、トラックとライブは別物ってことを体験できる音楽。その場の盛り上がりとかミュージシャンたちの息遣いとかが、やっぱりすごいんですよ。
この場所でどんなライブが繰り広げられるのか…!
ライブスペースの背面にあたる壁面や地面が白ホリになっており、スタジオとしての機能も完備。MVの撮影などでスタジオとライブステージの同時撮影みたいなこともできそう。
スティーヴィー・ワンダーで僕は泣いたわけですけど、ライブの感動って、もうなんか、エクスタシーにちかいっていうか。
そこまでの感動は年に1~2回あればいいほうですけどね。すげーもんみたな!っていう。人生を変えるぐらいの圧があるライブ。もう、心をバーンってやられて、次の日から、ああ、俺もやんなきゃな!みたいに、次の日からの在り方を変えてくれるパワーがあります。
ー最近みたライブでいくと、この人やばかった!というのはどなたですか?
BIGYUKIさんもそうでしたし、エッセンスフェスに出ていたマーシャ・アンブローシャスや、先日LAにいったときに観たマクスウェルもすごかったです。
活躍するマーケットや装置がない、のはミュージシャンだけに限らない。
ービルの構成としては、地下のライブハウスに加えて、撮影スタジオも各階にありますよね。なぜこのような形態になったのでしょうか?
大学を卒業したあとに、インターネット関連のベンチャー企業に就職したんですよ。
音楽レーベルをやる気ではいたんですが、いわゆる既存のレーベルに入ってもあまり意味ないなと思って、あえて得意だったIT系に進みました。そこで、いろんな分野のデザイナーさんとか、フォトグラファーさんとかのクリエイターの方々と接していて気づいたんです。活躍する装置や舞台がない、健全な仕組みが整っていないのは、ミュージシャンだけじゃないんだなって。
ー音楽業界だけじゃないぞと。
そこで、音楽に限らず、アーティストやクリエイターに対する興味が湧いて。いわばミュージシャンだけじゃなく「自分の個性に懸けて生きている人」を応援していきたいって気持ちに広がっていったんです。
ーなるほど、それでスタジオ運営だったりにも繋がっていくのですね。
そうです。スタジオをやりはじめたのは偶然もあったんですけど、起業に向けて用意していたお金があることでなくなってしまって。最初からレーベル運営をやるつもりだったのですが、直近で稼げるインターネットの事業からスタートしたんです。2、3年でなんとか起動にのって割と広いオフィスを借りていたんですが、クリエイターさんたちが、もともと打ち合わせで使っていた部屋を、スタジオで使わせてよって話になって。そこからですね。
ーそんな経緯があったんですね。
で、だんだんスタジオの運営が軌道にのっていって、いろんなコマーシャルの撮影とかいろんなものをうけはじめつつ、一方で本来やろう僕が注力したかったレーベルに本腰をいれました。
レーベル運営といっても、別の事業のビジネスを同時にしていた僕にとって、音楽事業の収益に関してはなかなかシビアな経験をしました。そもそもマーケットが小さいジャンルをやっているのこともあったんですが、トントンにすることでやっとというか。。
ビジネスなんで、収益を上げることは当たり前のことなんですが、それ以上に僕は社会的意義というか、自分のミッションと言うか、会社全体でそのバランスを取れるように音楽を根気よく続けてきました。
ー音楽だけじゃ食っていけない、というのはやはりありますからね。
はい、アートとビジネスの領域はどうしても交わらないところもあります。なのでそのバランスをいかに保つかっていうのをずっと訓練してきて、このビルはそのすべてを活かした集大成のひとつですね。
各スタジオは、利用する人が主役になれるようなデザイン、インテリアの工夫が散りばめられている。
全体的にはラフインテリアで、極力主張がないモノトーン。
ー山内さんの、人生経験がひとつのビルになったような。
まさにそうですね。
着工しはじめたのが3年前からで、いろんなひとに支えていただきながらビルをつくれることになって、はじめは2Fから上をすべて賃貸にして、不動産的な安定収入を得ながら、という案もあったんですよ。
ーいわゆる一般的なビル運営はそういったイメージです。
そっちのほうが収益は確実に安定します。でも、おもしろくないし、守りに入ってる感じがどうしてもあって。
ーロックを貫いたと。
かっこよく言えばそうですね(笑)。あと、多機能性をもたせているのは、このLIFESOUND自体も、いろんな肩書や仕事をもって働いてくれている社員が多いのですが、人だけじゃなくて建物もあらゆる用途に対応できる柔軟性があったほうがいいな、という考えからきていたり。
ーどこかを参考にしたり、トレースしたりというよりは、山内さんの頭のなかがすべて出発点ということですよね。
そうですね。建築家のかたがめちゃくちゃ優秀な方で。理想通りに形にしてくれました。
1Fは空間を区切ることができ、飲食スペースとスタジオ・コミュニティスペースとして使える。
美しく並ぶ椅子たち。実は数日前から…
LIFESOUND 社員のみなさん(山内さん含む)で100脚近くコツコツ組み立てていました。
異常な速度で椅子を組み立てていた山内さん。
音楽文化を育てるアメリカの教会とオランダの大学。日本では?
ーミュージシャンとかだと、こうビジネスに流されず、貫いてるなっていうのってなんとなくわかりやすいじゃないですか。音とか、在り方とかで。
そうですね。
ービルでその、ガンガンに攻めるというか、これまでになかった形をやっていこうというのはけっこう勇気がいりますよね。
正直めっちゃどきどきしてますし、自分でもまだまだどうなるかわからないですけど。目指しているものはけっこう明確にあるんです。
ーほう!
あの、海外をまわるなかで気づいたのが、いい音楽が育つ場所は、やはりちゃんとした仕組みがあるんですね。たとえば、アメリカの教会文化。あそこって、みんな日曜日に礼拝にいきますけど、良い音楽を聴けるっていうことも、協会が成り立っている大きな要因なんですよ。
ーそうなんですか!
メジャーなアーティストたちのバックミュージシャンをやっている人でも、教会に所属している人は結構いて、大きな教会は凄腕ミュージシャンたちを雇うんですよ。いい音楽に人が集まる。そして献金も集まる。こういう言い方したら信仰がある人には失礼ですけど、そういった仕組みがあるんですよね。
ーすげー!
それぞれの街で、文化として根付いているんです。音楽もそうだし、礼拝中に求人募集の看板をだしたりとかコミュニティとして機能してて。人を育てたり、集める仕組みがあるんです。
ー知らなかったです。
あとオランダも、九州ぐらいの小さい国なのに、ものすごく文化と音楽のレベルが高い。
おそらくその理由の一つは、音楽の教育をするコンサーベトリアムって音楽専門学校が、隣国のドイツなどに比べて、オランダは圧倒的に多いんですよね。
まちなかにも、駆け出しのミュージシャンたちが音楽を披露する場所もたくさんある。
そういうのをみたときに、あ、これ仕組みがめちゃくちゃ大事なんだなってもったんですよね。
日本ではそういった文化や仕組みを持つ場所がまだまだ少ないので、ここのビルはそういった仕組み、生態系をつくっていくのがいちばんの目標ですね。
他にも、情報発信基地としてネットが張り巡らされていく話や、代々木上原というローカルがいかに世界とつながるか、などまだまだ載せたいお話がありましたが、第一弾はここまで。
>>その他詳細は、先日公開されたプレスリリースをぜひご覧ください!
OPRCT
住所:東京都渋谷区上原1-29-10 OPRCT
電話:03-6416-8179
WEB:www.oprct.com
RELATED
関連記事