-こちらのお店は現在閉店しております-
「あのお店のアレ」があるから、代々木上原に行きたい!暮らしたい!と思う名物をピンポイントでご紹介する連載企画第31回。
今回は、「SecreT ART シークレットアート」のヴィーガン&グルテンフリータルトをご紹介します。
代々木上原の“身体に優しい”タルト屋さん
日々注目の新店やトレンドスイーツをチェックして食べ歩いている筆者ですが、ヴィーガンやグルテンフリーなどという“身体に優しい”系スイーツに関してはノーマークだったんです。自分には関係ないというか、肉も魚も大好きだし、卵やチーズなんて毎日のように食べているし、ヴィーガンさんって大変だな、なんて遠巻きに見ていました。さらには、グルテンフリーの食べ物なんて、アレルギーを持っている人や、ダイエット中の人たちが食べるものなんだろうな、という印象だったのです。ところが!! 今回、そんな自分を恥じる、目からウロコ、口からウロコの体験をしてしまったのです。
すべてグルテンフリー!?「シークレットアート」のタルトの味は?
代々木上原北口から歩くこと3分。閑静な住宅街へと進む道の一角にヴィーガン&グルテンフリータルト専門店「シークレットアート」はあります。
「いらっしゃいませ〜」と出迎えてくれたのは、タルトアーティストの山崎照(やまさき・しょう)さんと不破萌子(ふわ・もえこ)さん。昨年8月にお店をオープンして間もなく一年。毎週、金・土・日のみ営業されているのですが、全国からこちらのタルトを求めて訪れるファンがいるという知る人ぞ知る名店です。
ーこちらで販売されているタルトの味が忘れられないという知人の話を聞いて、いても立ってもいられずやってきました! 多くの人を魅了する「シークレットアート」さんのタルトにはどんな秘密があるのか、ぜひ教えていただきたいのです!
山崎:あはは。お話よりも先に、まずは召し上がってみてください。人気の「チョコタルト」です。でもチョコレートは使っていません。
ーチョコを使わないチョコタルト!? どういうことですか? 見た目は実にシンプルなチョコレートタルトですが、とりあえずいただきま〜す!……ん?? これチョコじゃないんですか?普通においしいチョコレートタルトです!
山崎:カカオパウダーとピュアメープルシロップでチョコソースを作って、豆乳クリームと合わせています。表面には玄米を焙煎した玄米コーヒーのパウダーをかけているんですよ。
ーなんと! 豆乳クリームとは……。さらには玄米コーヒーも使っているなんてヘルシーの極みですね。なのにおいしいって、なんだかスイーツの概念が覆されそう……。
山崎:良ければブラックベリーとプラムのタルトもどうぞ。こちらは豆乳クリームにバニラエッセンスを入れてカスタード風にしています。フルーツの艶出しに使っているナパージュも、完全植物性で砂糖を一切使っていません。
ーモグモグ。甘酸っぱいベリーのフレッシュなこと!そして、カスタードのような豆乳クリームとの相性も抜群ですね。というか、このタルト生地もめちゃくちゃおいしいんですけど!
山崎:一般的にはグルテンフリーのお菓子って米粉を使うことが多いんですね。でも米粉って実は小麦粉よりも血糖値が上がるんです。なので、うちでは米粉の代わりにアーモンド粉や玄米粉、オートミールなどを使って生地を作っています。豆にも注目していて、さまざまな豆を粉にして使うこともよくあります。甘みはメープルシロップの他にみりんや甘酒を使うこともあります。
ーだから生地がこんなにザクザクほろほろの食感なのですね。砂糖を使っていないくてヘルシーで、だけど歯ごたえのあるタルト生地で満足感があって……。スイーツ好きとはいえ、やっぱりカロリーの摂りすぎを気にしているのも事実なので、こんなにおいしくて身体に優しいのなら毎日でも食べたいくらい!! ペロリと二つもいただいてしまいましたが、そもそもなぜタルト屋さんを始められたのか、少しお話を聞かせていただけますか?
「シークレットアート」をはじめた理由は?
山崎:僕はもともとデザイナーとして働いていたのですが、お菓子作りが得意な彼女(不破さん)と5年前に出会い、タルトづくりにハマったんです。それまでお菓子作りどころか、料理もしなかった僕が、タルトの写真集を見たときからその美しさに心を奪われて、寝ても覚めてもタルトのことばっかり考えるようになったんです。仕事中もタルトの写真を眺めていたらさすがにクビになっちゃって(笑)。その当時はまだ砂糖を使った普通のタルトを作っていました。
不破:彼が横でタルトを作っているのを見て、砂糖も小麦粉もたくさん使っていて、どうせなら身体に優しいタルトを作ったらどうかと提案したんです。出会った頃、私がちょうど身体を壊して食生活を改善して治した経験があったので。周りの海外の友達が、日本にはヴィーガン向けの飲食店が少ないと嘆いたこともあって、砂糖や小麦粉、卵を使わないタルトを作れば需要があるのではないかと感じたんです。
山崎:豆乳がクリームの代わりになったり、豆が小麦粉の代わりになったり……最初は目から鱗でした。でも、制限があればあるほど燃えるタイプなのか、突き詰めていく内にいろいろアイデアが湧き出てきて、ますますのめり込みました。普通はパティシエになるために何年も修行するものですが、僕みたいな初心者がスイーツの世界で勝負しようと思っても絶対敵わないから。ヴィーガン&グルテンフリータルトだけに絞ることで個性を出したいと思ったんです。作ったタルトを徐々にInstagramにUPしていたら、少しずつ口コミで広がり、グルテンフリーのタルト教室を開いてほしいという声があったので、その頃二人で住んでいた渋谷のセンター街の自宅でレッスンを始めました。
ーセンター街に住んでいたのですか!? それもびっくりですが、タルトにハマりすぎて会社をクビになったというエピソードも衝撃的で、面白いです(笑)。お店よりも、タルト教室が先だったのですね。
山崎:お子さんが小麦アレルギーを持っていて困っているというお母さんが結構多かったんです。ママさんネットワークでじわじわと認知度が上がりました。ちょうどその頃、渋谷にTRUNK HOTELができて遊びに行ったのがきっかけで、ショップで僕らのタルトを販売していただけることになったんです。あそこは海外からの来客が多いので、ヴィーガンスイーツを作っている僕らの活動にスタッフの方が興味を持ってくださったんです。
ーいきなりTRUNK HOTELが取引先になるなんて運命的ですね!
不破:そうなんです。でも、ある程度数を作らないといけなくなったので、大きなキッチン設備が必要で。当時私が働いていたWE ARE THE FARM 渋谷店のキッチンを貸していただけることになったんです。そうしたら、WE ARE THE FARMでもタルトを提供していただけることになり、一気に作る量が増えて。
憧れの街、代々木上原での「シークレットアート」の出店
ーWE ARE THE FARMは代々木上原が本店ですね。もしかするとそのご縁でこの場所に?
不破:それもありますね。前から代々木上原は憧れの街だったので、WE ARE THE FARMのオーナーに「上原にお店を出してみたい」と話したらすごく応援してくださって。「僕らも地域の人にすごく助けられてきたからね」と。渋谷の喧騒とはかけ離れた閑静な住宅街のこの場所ですが、以前はサンドイッチ屋さんだったんです。これも不思議なご縁で、「サンドイッチ屋を閉める予定だから、よかったら使いますか?」と店主からご連絡をいただいたんです。
山崎:ラーメン屋だらけの渋谷の街から、ラーメン屋がほぼない代々木上原に。“餃子だって薬膳”の街ですからね。ヘルシーなスイーツ屋さんをスタートするにはぴったりなのではと感じました。今、オープンしているのは金・土・日のみですが、ようやくご近所の方にも知ってもらえて、常連さんも増えてきました。代々木上原のすごいところは、お年寄りの方でも「あら、グルテンフリーなのね」と、ヴィーガンやグルテンフリーという言葉を知っていること! 普通は知らないですよね。ヴィーガン向けの食材を使用して作るとコストがかかることもわかってくださっていて、「この値段で大丈夫なの?」と言ってもらえることもあります。カップラーメンばかり食べていた僕には考えられない意識の高さです。
不破:近所に野菜料理家として有名な庄司いずみさんが住まれているのですが、先生が私たちのことをとても応援してくださっていて、お教室に通われている生徒さんもよく買いに来てくれるんです。WE ARE THE FARMのオーナーの言うとおり、近所の方に助けられているなあとつくづく感じます。
旅するタルト屋さんを目指して
ーお話を伺っていると、代々木上原に来るべくして来られた感じですね!
不破:そうですね。近くにある代々木八幡宮も昔から私たちのお気に入りスポットだったので、近くなって嬉しいですし。
山崎:でも、本当はお店を持つことよりも、「旅するタルト屋」になることが夢なんです。
ー旅するタルト屋?
山崎:国内外問わず、旅をしながら農家さんを巡り、そこで出会ったおいしい食材でタルトを作って販売する。現地の人と交流しながら、そこでしか作れないタルトを作りたいと思っているんです。でもきっと、旅ばかりだと疲れるから、この場所を拠点に活動を広げていけたらいいなと思っています。もう一つは、今ケータリングの仕事がとても楽しいので、そこにも力をいれたくて、しばらくタルト教室は休憩しようと思っています。
不破:私も旅が大好きだし、いろんなところに行ってみたいんです。お店を持つことは私の夢でもあったので、お互いの夢にうまくタルトが乗っかった感じですね。
ー理想のパートナーですね!素敵すぎます!そういえば、お二人の屋号である「SecreT ART(シークレットアート)」の由来は?
山崎:『ザ・シークレット』という引き寄せの法則について書かれた世界的なベストセラー本があるのですが、僕も彼女もこの本が大好きなだったこともあって、ここからシークレットを、そして、僕がアートが好きなので「SecreT ART」にしたら、「あ!タルト(TART)が隠されてる!」って気づいたんです。
ー“偶然の引き寄せ”で巡り会えたお二人にとって、ぴったりの名前ですね。今後、このタルトがさまざまな場所で広がっていくのかと思うとワクワクします。素敵なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!
SecreT ART
シークレットアート (2020年8月閉店)
住所:東京都渋谷区西原3-16-11 クラタマンション 102
営業日:金土日
時間:12時過ぎ〜18時(売り切れ次第終了)
メール: secretart3smile@gmail.com
https://secret-art.amebaownd.com/
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