街の暮らしを支える商店街に馴染む、話題の陶芸教室
代々木上原の南側にある、駅から徒歩3分に位置する上原仲通り商店街。
行列のできる町中華、おしゃれなセレクトショップや雑貨屋、街の文房具屋にスナックなど個性豊かなお店がひしめく通りです。そんな通りに彩りを加えるのが、話題の陶芸教室studio knot。入会待ちが途絶えない人気教室で、編集部スタッフもいつか取材ができたら…と思い続け、今回取材を快諾いただきました!
自分たちらしいライフスタイルとの両立からたどり着いた、「代々木上原」という街
studio knotは2018年にオープンし、今年で5年目の陶芸教室。今回は、studio knot代表の橋本さんと、現役の陶芸家で講師を務める内田さんにお話を伺いました。
実はお二人はご夫婦。美大の同級生として知り合い、結婚。出産や転職などを経て、2018年に二人で教室を立ち上げました。三人のお子さんの子育てとの両立を目指して、ビジネス街付近の立地を選ばず、落ち着いた住宅街での立ち上げを検討していたそう。
橋本さん:「山手線の内側だと子育てとの両立が難しい気がして。代々木上原は住んでいる方も多く、出かける街というよりも帰ってくる要素が多い「じっくりと住まう場所」で、教室のイメージに近かったんです。温かい繋がりのある下町っぽさと、洗練されたセレブっぽさが混ざり合う魅力の多い街ですよね」
以前、内田さんが代々木上原のギャラリーで何度か個展をしていた縁もあり、代々木上原で物件探しをスタート。理想の物件が見つかり、この地で開講となりました。
「上原の街に少しずつ馴染ませてもらえたのが、教室が今まで続いている理由」と話す橋本さん。まさに教室は街に馴染んでいる。というか、馴染みすぎているかも。
教室があるのは、路面から一本入ったマンションの一階。そして通りには目立った看板がないので、一見するとここに陶芸教室があることに気付かない。近所のトンカツ屋さんも、教室の存在に気づくのに3年かかったそう。
商店街の通りから、足を踏み入れてマンションの中庭に入ると、ようやく教室の玄関がお目見え。ガラス張りの玄関からは、温かみのあるライトや、棚に飾られたうつわが見え、開放的で入りやすい雰囲気です。
午前中は気持ちの良い光が差し込み、通り沿いではないので外からの視線を気にせず作品作りに没頭できる環境は生徒さんからも好評なんだとか。
人気の秘訣は「作りたい物が作れる、自由な制作環境」
教室には、細かい制作道具や電動ろくろ、焼き上げの窯まで陶芸の一連の工程を完結できる設備が揃っています。
粘土を捏ね、成形したら乾かして素焼き。その後、うつわの表面をガラス質に変化させたり色をつけたりする釉掛けを行い、工房内の窯で本焼きして完成。およそ1ヶ月で作品が仕上がります。
教室は2時間半のクラスを月2回以上の受講回数から選べる形式。ここまでは他の陶芸教室同様ですが、studio knot ceramicsの陶芸教室としての一番の特色は、カリキュラム別ではない自由な制作環境にあります。
内田さん:「以前7〜8箇所の陶芸教室で講師として働いて、初級、中級、上級などの実力でクラス分けされていたり、茶碗やお皿など制作テーマが決まっている教室が多かったんですよね。運営する側はその方が楽ではあるんですけど、それだと生徒さんが作りたい物が作れるまで2年ほど時間がかかったり、伸び伸び作品作りを楽しめないなと感じて。自分で教室をやるなら、生徒さん自身が、”作る物や個数、ペース”などを決めて自由に学べる方が技術が積み重なるように感じました」
もちろん技法がないと作れないので、最初に基礎となる技法を教えてもらい、その後は作りたいものをアドバイスを受けながら完成までサポートしてもらえるようになっています。クラス単位ではなく全て個別指導なので、教える側は大変そう。教科書のように一から順に教えてもらいたいという人よりも、うつわが好きで、作りたい作品のイメージがある人に向いていそうです。
技術だけじゃない。刺激ある出会いこそ、この教室の醍醐味
これまで陶芸家や陶芸教室の先生は職人気質の方が多いのかなと感じていたのですが、内田さんとお話しするとその柔らかい雰囲気や話しやすさも教室の人気の理由なのだろうなと感じます。話しやすい雰囲気は生徒間にもあるそう。
内田さん:「陶芸教室と聞くとカルチャーセンターのようなイメージがあると思うんですけど、そういう場にはしたくなかったんですよね。出会いのサロン的な場にしたかったので、教室名も「(人と人を)結ぶ」という意味を持つknotと名付けました。
今は教室をきっかけに生徒さん同士が友達になってプライベートで食事に行ったり、同じクラスを受けたフリーランスのスタイリストとカメラマンの方が一緒にお仕事を始めたり、ここでの出会いが教室外でも続いている方もいますね。教室名に込めた思いのように教室で人が繋がり、出会いを楽しめるサロンのような場所に育ってくれているのは本当に嬉しいですね」
教室に通うと既製品のうつわを手放して、自宅の食器棚が自作のうつわで埋まる生徒さんも多いそう。「次は売るフェーズだ!」「一緒に展示しようかー?」など相談し合って場所を借りて個展をする生徒さんもいるのだとか。元々は生徒としてうつわ作りを体験し、その楽しさに没頭して今では教室の運営スタッフとして働いている方もいらっしゃいました。
生徒さんは陶芸をゼロから始める初心者、クリエイティブな職業で自分の表現の幅やバリエーションを広げるために陶芸に挑戦する方など、きっかけや目的はさまざま。
自分の二次元のキャラクターを三次元で表現するイラストレーターの方、作った作品でクラウドファンディングに挑戦する方など、通っていらっしゃる生徒さんのエピソードは個性豊か。
主宰するお二人も、生徒さんの発想から陶芸の新たな魅力や可能性に気づかせてもらっているそうです。
knotな繋がりは入会方法にも。入会はほぼ生徒さんの口コミなんだそう。「人の繋がりや口コミの力も、人情深い下町っぽさの残る上原パワーかもしれないですね」と橋本さん。
多数の生徒さんが在籍し、荷物を置く生徒用ロッカーの上限からクラスは満席。タイミングにより、新規入会が難しい場合もありますが、興味のある方はまずは見学や一回完結のワークショップに参加してもらえたら。本漆を使い、本格的な修繕を学べる金継ぎ教室もあり、こちらは現在空きがあるそう。
物作りに没頭して、素敵な仲間と出会える「大人の学校」
主宰するお二人の「教室での出会いを大切にしたい」という思いや、代々木上原という場所故の生徒さんのクリエイティブなキャラクターなど、ここには普通の陶芸教室とはちょっと違う刺激的な出会いがありそう。
単一のテーマに同じベクトルで臨むのではなく、それぞれが自分のイメージを形にし合う制作環境が生徒のキャラクターや世界観を伝え合い、教室全体に良い刺激を生んでいるように思います。
普段は接点のない人と陶芸を通じて知り合い、肩書きも年齢も超えてフラットに話せる楽しさは大人になって久しく味わえていなかった、なんだか学生時代を思い出すような体験。
陶芸の技術が身に付くだけじゃなく、陶芸を通じた出会いで実生活が豊かになる場所。この教室が人気の理由は、そんなところにありそうです。
見るだけ買うだけじゃない、本物を体験できるギャラリーも
教室だけでなく、2年前から始めたstudio knotのもう一つの顔がギャラリー。ギャラリーでは、うつわや絵など暮らしを豊かにしてくれる作品やクラフトの企画展を行っています。
展示だけで終わらないのがknotスタイル。在廊の作家さんに仕上げの工程を見せてもらえたり、作家さんと一緒にうつわを作るなど、ワークショップの機会があるので、買うだけではない体験ができるのが特徴です。
教室での陶芸はハードルが高いと感じている方は、作り手と使い手を結ぶギャラリーで気軽にアートに触れてみるのも良いかもしれませんね。
studio knot
【住所】〒151-0064 東京都渋谷区上原3-4-1 フレスカ代々木上原II-103
【開講時間】
- 火・水・木 10:00 〜 15:30(陶芸教室開講日)
- 土・日 10:00 〜 18:30(陶芸教室開講日)
- 金・日 10:00 〜 16:00(金継ぎ教室開講日)
【電話】03-6416-8118
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